まあ、食ってしまいたいくらいには。
「あ、そうだ。三栗くんも一緒にどう?」
わたしと、芽野くんと、三栗くん。
同級生のわたしたちは、生徒会の中でも何かと一緒にいることが多い。
だから軽い気持ちで誘ってみたんだけど。
刹那、わずかに部屋の空気が張りつめたのを肌で感じた。
些細な変化に戸惑うと同時、誰かのスマホが着信を知らせて。
はっと我に返る。
「あ……」
「ごめん。明日は学校にいないから、私はパス」
まるで海の底でひとりだけ、普通に呼吸をしているかのような。
さっきまでと何一つ変わりのない表情の三栗くんは。
「先に教室に戻ってるよ。桃、遅れないように来なね」
それだけ残して、生徒会室を出ていった。
一緒に遠ざかっていくメロディーが聞こえなくなるまで、口を開くことができなかった。