まあ、食ってしまいたいくらいには。



三栗くんに襲われたのはその数日後だった。

放課後、寮に帰るためひと気のない中庭を横切っていた時。



「桃」

「え……?っ、!」


声のした方を振り返った瞬間、ふわりと鼻先を掠めた毛先。


状況を理解するよりも早く、はっと口を手で覆った。

ほぼ同時、手の甲に柔らかなものが触れる。




「……ちょっと。私、かなり格好悪いんだけど」



不服そうな三栗くんの顔が目と鼻の先にあった。


びっくりして言葉も出ない。


い、いきなりなに……!?


じり、と下がればその分距離を詰められる。

それを数回繰り返せば、あっという間に壁際に追いやられてしまった。

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