まあ、食ってしまいたいくらいには。
しょぼんとしたまま愔俐先輩を見やる。
「お風呂、先使ってもいいですか?」
「好きにすればいい」
「どうも。お邪魔しました」
今度こそ先輩たちの横を通り抜ける。
そういえば、何の話し合いをしてたんだろう。
生徒会のことだろうか。
それともわたしのこと……なんて、それはないか。
あんな真剣な顔でわたしのことなんか話さないだろう。
それでも、なんとなく気になったわたしは。
少し歩いてからふと、振り返った。
奈良町先輩はいなくなっていて、
愔俐先輩だけがこちらを見つめていた。
そのまま5秒くらい見つめあったのち──、
先に逸らしたのは愔俐先輩だった。
「……変なの」
追いかけるように手を伸ばしてみる。
もちろんそれは宙を掴むだけ。
背を向けて行ってしまうその後ろ姿には、今さら手を伸ばしたって届きやしない。