まあ、食ってしまいたいくらいには。
愛の証
「……お前ら、さすがに距離近すぎじゃね」
我慢ならないといったように奈良町先輩がそれを指摘してきたのは、文化祭の後始末に生徒会一同追われているさなか。
先日行われた文化祭は創立以来初めての一般公開を取り入れただけあって、ここ数年で他に類を見ない大成功を収めた。
もちろんわたしだって思いっきり楽しんだ。
けど、生徒会に所属してる限り、それでおーしまい!というわけにもいかなくて。
待ち受けていたのは、後始末。
こうして生徒会に篭もり、捌いても捌いても終わらない仕事に目を回してる、わけ、なんだけど……。
わたしがなにか言うよりも早く。
三栗くんが手元を見たまま言葉を返した。
「どうしたんですか、いきなり」
「どうしたもこうしたもねーよ。降ろせよ、それ」
それ、と。
少々乱暴なコトバで形容されたのは。
いうまでもなく、三栗くんの膝の上に乗せられているわたしのことだろう。
ようやく諦め……いや、慣れてきた頃だったのに。
いよいよツッコまれたので、またしても意識せざるを得なくなってしまった。
「お前らがイチャつくのは百歩譲っていいとして、TPOは考えろ」
ごもっともである。
しかし、それを聞いていた愔俐先輩が反応した。
「本当に百歩で譲るのか?」
「あ?テメーはいいから早く判押せよ」
「すでに押してお前のほうに置いてある。人に妬いている暇があるなら自分の手元を見ろ」
奈良町先輩が今までにない速さで愔俐先輩に掴みかかっていく様子を呆れた目で見ていた芽野くんがふと、こちらを向いた。
「三栗……その、重くないのか」
「重くないよ」「重くないよ!?」
二人分の声が重なった。