まあ、食ってしまいたいくらいには。


「わたしは平穏な学校生活が送りたいだけなんです。先輩と契約した時点で、それはだいぶ遠のいてるだろうけど……でも、それでも──」



「黙れ、と。言ってるのが聞こえないか?」


愔俐先輩が立ち止まった。


つうっと向けられたナイフのような視線に、心臓がひゅっと鼓動を止める。


心なしかわたしを支えている手に力が入っているような。

太ももと、肩。
くい込む指が地味に痛かった。




「いまここで殺してもいいんだぞ」

「……ひゃい、ゴメンナサイ」



腕の中で震えるわたしに、愔俐先輩は息を吐き出した。


お、落とされないよね……?

離されないよね……?


階段の下をのぞき込んで、その高さにぞっとする。まさか、ね……。


念の為に愔俐先輩の腕を掴んでおこう……。

死ぬときは何がなんでも道連れにしてやる。



3階の廊下を進んだ突き当たり、いちばん奥。

目的の場所はおそらくそこだ。


< 17 / 236 >

この作品をシェア

pagetop