まあ、食ってしまいたいくらいには。
「わたしは平穏な学校生活が送りたいだけなんです。先輩と契約した時点で、それはだいぶ遠のいてるだろうけど……でも、それでも──」
「黙れ、と。言ってるのが聞こえないか?」
愔俐先輩が立ち止まった。
つうっと向けられたナイフのような視線に、心臓がひゅっと鼓動を止める。
心なしかわたしを支えている手に力が入っているような。
太ももと、肩。
くい込む指が地味に痛かった。
「いまここで殺してもいいんだぞ」
「……ひゃい、ゴメンナサイ」
腕の中で震えるわたしに、愔俐先輩は息を吐き出した。
お、落とされないよね……?
離されないよね……?
階段の下をのぞき込んで、その高さにぞっとする。まさか、ね……。
念の為に愔俐先輩の腕を掴んでおこう……。
死ぬときは何がなんでも道連れにしてやる。
3階の廊下を進んだ突き当たり、いちばん奥。
目的の場所はおそらくそこだ。