まあ、食ってしまいたいくらいには。


「……ヤバい噂」



それがなにか、なんて。

わざわざ聞き返さなくても知っていた。


口をついて出たのは、信じたくないという思いが働いたからかもしれない。


彼女たちは言いにくそうに、だけどはっきりと言った。



「生徒会がみんなフォーク、ってこと」



わかっていたはずなのに。

改めてその言葉を耳にすれば、握りっぱなしの掌にじわりと嫌な汗が滲むような気がした。



「で、さ。もしかして甲斐田さん、そのこと知ってたんじゃないの?」



答えない。

答えられない。


せめて俯かないようにと、じっと見つめ返すわたしに彼女は「ほんと憶測でもの話すけど」と前置きをしてから続ける。


「どっかでたまたまそのこと知ってさ、脅されて入ったとかじゃないの」



質問の体はかろうじて保っていたけど。

ほとんど確信をもった聞き方だった。


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