まあ、食ってしまいたいくらいには。
ずどむっ、と。
闘牛に突進された並の衝撃を背中に受けた。
「おっはよー桃……って、顔どした?」
振りかえると、そこには小柄でかわいい女の子。
「……ほの空ちゃん」
「うん」
「わたし、ばかツイてないんだって……」
「うん?」
ああ……
神さま、どうか、神さま。
今日も一日、何事もなく過ごせますように。
五体満足で、生きて、おうちに帰れますように。
「桃ーなに祈ってんのかわかんないけど、あと3分でチャイム鳴るよー?」
学校の正門を抜けた先で、ほの空ちゃんが待っている。
よし、よし。
気合いを入れるように、自分の頬をたたいて顔をあげた──そのとき。
ふと、校舎の方から視線を感じた気がした。
「ん……?」
気のせい、かな?
見上げた窓には誰の姿も、影もなく。
首をかしげていると、ほの空ちゃんが「桃!おいで!カム!」と強めにわたしを呼んだから。
だから、意識をそっちに移した。
「ほの空ちゃん!わたし犬じゃないよー!それより今日の放課後、ケーキ食べ行こー!」
「ケーキはわかったから早くしてよもー!遅刻寸前なんだってば」
「ほの空ちゃん、ケーキ!」
「あたしはケーキじゃない!誤解を招くようなこと言うな!」
わたしも正門をくぐって、大好きな友だちに駆け寄ったのだった。