まあ、食ってしまいたいくらいには。


「桃」



三栗くんがわたしの名前を呼んだ。



「桃は、私たちのことが怖い?」



二度と関わることなんてないと思っていた。


どんな猛獣よりも幽霊よりも、フォークという存在が怖かった。


この人たちと出会うまでは、そうだった。



でも今は違う。




「怖くなんかない。みんなのこと、大切な仲間だと思ってる」



すると三栗くんが、ふっと柔らかな息を吐き出した。




「それなら私たちはそれだけで充分だよ」



芽野くんも奈良町先輩も、愔俐先輩も。


黙って、その言葉を聞いている。



諦めたんじゃない。

この人たちは、受け止めることを決めたんだ。



ふと、ほの空ちゃんとの会話を思い出す。

必死に説明するわたしに、わかってるよ、とすぐに笑って頷いてくれた。


『だって桃、すっごい楽しそうだったもん。前よりも生き生きしてるし。生徒会…ってよりも、桃を信じるよ。
あたしは、あたしの大切な人の言葉を、信じてる』



あのときはなんでそんな言い方したんだろうって、不思議だった。

だけど今ならわかる気がする。


……大切な人の言葉なら、信じられる。


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