まあ、食ってしまいたいくらいには。


ようやく愔俐先輩の刺された部分を目の当たりにする。


そこは思っていた以上に出血が酷く、身体を横たわらせる際に触れた手は、この世のものとは思えないくらい冷たかった。


救急車を呼んで、愔俐先輩のお腹の傷口を圧迫することに集中する。



手持ち無沙汰なのか死にかけてるだけなのか、わたしの顔を眺めていた愔俐先輩が静かに口をひらいた。




「お前は滅多に泣かないと聞いていた」

「っ……そうですよ。わたしだって、そのはずだった」



人前ではもう泣かないって決めてたのに。

この人の前ではそんな決意もボロボロと崩れ落ちていく。


ぐっと嗚咽を我慢すれば、代わりとばかりに大粒の涙が両目から零れた。



「うそつき」


愔俐先輩はわたしにたくさんの嘘をついていた。

まんまと騙されていたわたしもわたしだけど。


それでも、どうしても許せない嘘がひとつだけあった。



「わたしより先に死なないって言った」


愔俐先輩はなにも言わない。



「わたしのことは守らなくていいって言った……っ」


言った、のに。

わたしは自分のことを守り切れなかった。


今になってそのことに気づくなんて、遅すぎる。


わたしはずっと、愔俐先輩に




────……生徒会に、守られていた。


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