まあ、食ってしまいたいくらいには。


しかし愔俐先輩の考えはどうやら違ったらしい。



「本当にそれだけか?」


あるだろう、と長い指を真っ直ぐこちらに向けられる。



「お前の唯一の取り柄が」

「え、……え?」



舌をちょこんと出して「これ?」という仕草をする。



「それはお前の最大の欠点だ」

「さっきから失礼すぎません?」



甲斐田桃、と愔俐先輩がわたしのことを呼んだ。

名前を呼ばれたのはこれで二度目だった。



「お前は本当に生き汚い」



……みんなして、なんだ。

ひとのことを汚い汚いって。


だけど。

愔俐先輩が言いたいこともわかった。


伝わったことが伝わったんだろう。




「俺はそれに賭けた」


「……それで、結果は」



ちらりと愔俐先輩がこちらを見た。


そして────





「まあ、損はしていないだろうな」


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