まあ、食ってしまいたいくらいには。




看守の人からは15分だけだと言われていた。


面会室に入ったわたしは、そこにいた人物の前に腰かける。

たった一枚のガラスがわたしたちの世界を分けていた。



挨拶よりも先に愔俐先輩が目を覚ましたことを伝えると。


敬郷先輩はわずかな間の後に、そっか、と言っただけだった。



結局、敬郷先輩は逃げきれなかった。


テレビは実名を報道しなかったけど、学校の人たちは敬郷先輩が捕まったこともフォークだってことも、その日のうちに知った。



「疑い、晴れましたよ。生徒会の」



またひと呼吸置いて、そっか、と返ってきた。


取り調べでも、犯行の動機は黙秘し続けているという。



だから、敬郷先輩のほうから「忘れられない味がある」と言われたときには、わたしだけじゃなくて看守の人まで驚いた顔をした。


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