まあ、食ってしまいたいくらいには。


バカじゃないの、と。

気がつけば、震える声でそう言っていた。



「食べるわけないだろ。ふざけたこと……」

「ふざけてなんかないよ」



わかってる。

そんなこと、こっちだってわかっている。


彼女は本気で言っていた。


だからこそ、信じられないのだ。



「約束しただろ。僕はきみを食べないって、傷つけないって言ったよね」


もちろん覚えていると言わんばかりに彼女がうなずいた。



「あのときのあなた、カッコよかったな〜」

「話を逸らすなよ。なに、もう僕なんかと一緒にいたくないってこと?」

「そんなわけないじゃん」



動かれるたび、彼女の匂いが脳みそを乗っ取らんばかりに刺激してくる。


本来なら食欲なんて湧かないほど甘ったるいその匂いは、それでも、あれほどなりを潜めていた僕の食欲をこれでもかと奮い立たせていた。



……食べたくない、なんて。


本当はもう、ずっと前から────


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