まあ、食ってしまいたいくらいには。
……か、と思ったら。
もうわたしになにを言ってもむだと判断したのか。
彼女たちは他の生徒会メンバーに目を向けた。
「その子、いつも何かしら食べてますよ」
「おかげで自分の食事の幅も広がった」
「笑っちゃうくらいバカだし」
「それも真性のバカ」
「と、友だちいないしっ」
「私たちがいるから大丈夫」
「しかも、えと、えっと……うるさいんですよ!?」
言っただろう、と愔俐先輩がこちらを見た。
「お前は口から先に生まれた」
「なんでわたしに言うんですか……」
というか、みんな、そんなふうに思ってくれてたんだ。
じんわりと胸にひろがる温かなものを感じていると。
「もしかして、付き合ってるの」
なんて、涙まじりに聞かれたから。
あわてて首を横にふる。
すると今度はみんなに、「その子のこと好きなんですか」と爆弾発言をした。
な、なんてことを!
ここで一斉に否定されて平然といられるほど、わたしの自己肯定感も高くはない。
だから耳を塞ごうとした、その直前。
いつもはバラバラな彼らが、そのときばかりはまるで示し合わせたように口を揃えたその一言に。
じわり、顔が熱くなるのを感じた。
『まあ、食ってしまいたいくらいには。』end.