まあ、食ってしまいたいくらいには。
「そちらの条件はそのままで構いません」
怖くないわけない。
「あなたに、生徒会に、この身を差し出します」
フォークのことは当たり前に怖いし、もちろん信用もできない。
「わたしの命、それ以外ならなんでもあげる」
でも、もうメソメソするの終わり。
そんなの全然わたしらしくないから。
「だけど絶対に食べさせてあげない」
見くびられちゃ困る。わたしはやられたらやり返す女。
いただいた笑顔だってちゃんと返すんだ。
「わたしはそんなに甘くないですよ」
できるかぎりでいちばん悪い顔をしてやった。
だけどそんなわたしの限界を軽々と超えてくるのが玖桜愔俐という男で。
「面白い」
ぞく、と粟立った肌。
どうしようもなく騒ぐ鼓動。
こういうの、なんて言うんだっけ。
“生きた心地がしない”?
ううん。
いま、最っ高に────生きた心地がしてる。
こうしてずっと空席だった生徒会庶務の座は、晴れてわたし、甲斐田桃のものとなったのだった。