まあ、食ってしまいたいくらいには。
「はは、昨日の桃はどこにいったの?」
「へ、昨日……?」
警戒しながら離れて歩いていたわたしを三栗くんが振りかえる。
その顔はいたって普通、いつもの三栗くんだ。
「愔俐さんに意見してた、勇ましい桃だよ」
あのときはカッコよかったな、なんて言うけど。
なんにもカッコよくなんてなかったし、わたしだって必死だった。
そのあとすぐに生徒会室を飛びだしたから、三栗くんたちと話すこともなく。
生徒会長にあんな口きいたから、てっきり悪口くらい言われてるかと思ったけど……。
もしかしたら取るに足らない些細な出来事だったのかも。
それはそれでなんか悔しいけど。
「そんなあからさまに避けられちゃ、さすがの私でも落ち込むなぁ」
「…………」
「前みたいに接してくれないの?」
「……三栗くん、ってさ」
「うん?」
「今まで…どんな気持ちで、わたしと一緒にいたの?」
三栗くんが一瞬、足を止めた。
だけど振りかえることもなく、すぐに歩を進める。