まあ、食ってしまいたいくらいには。
生徒会の寮にはお風呂がひとつしかなかった。
嘘だと思って三栗くんに案内されて見に行ったら、たしかにひとつしかなくて。
『時間制にするか、女子寮の風呂を使うか』
迷っているわたしに三栗くんは、ああ、とつけ足した。
『別に一緒に入ってもい──』
『女子寮のお風呂を使わせてもらうね』
と、いうわけで。
入浴だけは女子寮のお風呂を使わせてもらうことになったんだけど……。
「あれっ、その部屋着かわいーじゃん!」
「でっしょぉー?女子会のために奮発しちゃったぁ」
「え、そっち女子会なんてすんの?えっ混ぜてー」
「いいよ来な来なー?参加費はお菓子ね!」
「あたしらも行きたーい!」
お風呂セットを抱えて女子寮に入った瞬間。
もう、なんというか、雰囲気が違った。
生徒会の寮のしーんと静まりかえった空間とはぜんぜん違う。
廊下には可愛い私服にくるまれた女の子たちで溢れかえっていて、みんな楽しそうにしてて、心なしかあまーい匂いもして。
わたしなんかよりよっぽどいい匂いさせてると思う。ここにいるみんなケーキです、って言われてもいまなら信じちゃいそう。
「うう……越してきたい」
わたしもこっちがよかったよぉ……。