まあ、食ってしまいたいくらいには。


ちょうど混む時間帯だったのか、大浴場にはそれなりに人がいた。


てっきりみんな連れ添って入っているのかと思ったけど、わたしみたいにひとりで入っている子もいて少しほっとする。







「生徒会だったら誰が好き?」



唐突な話題にどっきーんと胸が跳ねた。


シャンプーをしていたわたしの右隣、女の子たちがそんな会話をしている。




「えーそうだなーそっちは?」

「あたしは断然、愔俐先輩!冷たいけど彼女には絶対に手とかあげなさそうだし、なんだかんだ溺愛してくれそう」

「それちょっと少女漫画の読み過ぎじゃーん?」



盗み聞きしながらわたしも心の中で、そうだよ、とうなずいた。


愔俐先輩って最悪だよ。

女の敵だよ、優しくないよ。


やめといたほうがいいよ、あの人だけは。



友だちに茶化された愔俐先輩推しの女の子がむくれたような声を出す。




「えーそうかなぁ?あーあと奈良町先輩もわりと好き」

「あんた年上のがいいんだ。奈良町先輩ってちょっと怖くない?」

「でも猫とかには絶対優しいよ」

「わかる、猫とかには絶対優しい」



どんな偏見だと思った。

だけど少しわかるとも思った。

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