まあ、食ってしまいたいくらいには。



「ふわ…、広いお風呂さいこー……」


ぐっと湯船の中で伸びをする。


足を伸ばして入れるお風呂なんて、もしかしたら初めてかもしれない。

アパートのユニットバスは狭かったし、実家のお風呂なんてもっと小さかった。


みんなで一緒に入るお風呂ってなんかいいな。

家族!って感じがする。


余計にあの魔の巣窟に帰りたくなくなっちゃったよ。


今からでも女子寮に移してもらえないかな。

まあ、無理だろうけど。




「はぁぁ……つかの間の休息だぁ」


ここがわたしの安全地帯、セーブポイント。

もうちょっとゆっくりしていこう。


なんて、思ったが最後。


わたしはたぶん、ゆっくりしすぎてしまったんだ。





一体どれぐらい時間が過ぎた頃だろう。




「ちょっと、あの子おかしくない?」

「え!やだ、意識なくなってるよ!?」

「え、あっ、甲斐田さん?ねえ甲斐田さん、大丈夫!?」



なんだか周りが騒がしいなあ、なんてぼんやり思って。

ざばーって湯船から引き上げられる感覚がして。


え、ちょっと待って。




「まだ帰りたくない……」

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