まあ、食ってしまいたいくらいには。
満ち足りた食欲
しずんでいた意識が浮上するのを感じて、ゆっくり目をあける。
ここは……どこ?
わたしのアパートじゃない。
そう思ったのも一瞬で、すぐにここが自分の部屋であることを理解する。
……生徒会の寮だ。
完全に忘れてるんじゃなくて、うっすらと覚えてるのが憎らしい。
お風呂でのぼせて倒れてしまったことも、周りの人たちに迷惑をかけたことも。
そして……
「見下ろすの、やめてもらっていいですか」
ベッドサイドからじっとわたしを観察しているこの男が、女子寮まで迎えにきてくれたことも。最悪なことに覚えている。
起きあがろうとしたけど、まだ体が怠かった。
仕方なく寝転がったまま愔俐先輩を見上げる。
キアヌ・リーブスじゃなかったけど、ハリウッドスター並みに面が良い。
まるで一種の芸術作品のような造形美は、笑わない、驚かない。
いつか愔俐先輩を驚かせる日があればそれは間違いなく記念日になるだろう。
と、そのとき愔俐先輩がようやく口をひらいた。