まあ、食ってしまいたいくらいには。
「芽野くんもみんなに好かれてると思うよ」
「……そんなことない」
「いや、お世辞とかそんなんじゃなくて……、ぃたッ」
「わ、悪い!大丈夫か?すまない、そんなつもりじゃ」
「ごめん大丈夫。ちょっと傷口に、しみて……、」
そのとき芽野くんの手が震えていることに気付いた。
わたしの視線が注がれていることに芽野くんも気付いたんだろう。
震える手首を、ぎゅっと握りしめてつぶやいた。
「嫌いなんだ」
わたしのことか、ケーキのことかどっちかだと思った。
だけどすぐにそうじゃないことを悟った。
それは、この世の憎悪をぎゅっと濃縮したような声色だった。
「フォークである自分が大嫌いなんだ」