まあ、食ってしまいたいくらいには。


「芽野くんもみんなに好かれてると思うよ」

「……そんなことない」


「いや、お世辞とかそんなんじゃなくて……、ぃたッ」

「わ、悪い!大丈夫か?すまない、そんなつもりじゃ」

「ごめん大丈夫。ちょっと傷口に、しみて……、」


そのとき芽野くんの手が震えていることに気付いた。


わたしの視線が注がれていることに芽野くんも気付いたんだろう。

震える手首を、ぎゅっと握りしめてつぶやいた。




「嫌いなんだ」


わたしのことか、ケーキのことかどっちかだと思った。

だけどすぐにそうじゃないことを悟った。


それは、この世の憎悪をぎゅっと濃縮したような声色だった。




「フォークである自分が大嫌いなんだ」

< 74 / 236 >

この作品をシェア

pagetop