まあ、食ってしまいたいくらいには。
芽野くんはわざわざロビーまで出てきてくれた。
部屋にあげなかったのは彼なりの気遣いだと思う。
フォークとふたりきりになることをわたしが恐れていると思って。
それは半分は正解で、半分は不正解だった。
「ご飯ってもう食べた?」
「いや……まだ食べてない」
「そっか、よかった」
わたしが箱から取り出したのはふたつのケーキ。
木でできたフォークとともに、ケーキを芽野くんに差し出した。
「はい、どうぞ」
「これは、」
「これ?これはね、ラベンダーチャイのケーキ。ここのケーキね、どれもすごく美味しいんだよ。よくほの…友だちと食べに行くからメニューは制覇してるんだけど、このラベンダーチャイがほんとにおすすめなの」