まあ、食ってしまいたいくらいには。


芽野くんはわざわざロビーまで出てきてくれた。

部屋にあげなかったのは彼なりの気遣いだと思う。


フォークとふたりきりになることをわたしが恐れていると思って。

それは半分は正解で、半分は不正解だった。




「ご飯ってもう食べた?」

「いや……まだ食べてない」

「そっか、よかった」


わたしが箱から取り出したのはふたつのケーキ。

木でできたフォークとともに、ケーキを芽野くんに差し出した。



「はい、どうぞ」

「これは、」

「これ?これはね、ラベンダーチャイのケーキ。ここのケーキね、どれもすごく美味しいんだよ。よくほの…友だちと食べに行くからメニューは制覇してるんだけど、このラベンダーチャイがほんとにおすすめなの」

< 76 / 236 >

この作品をシェア

pagetop