まあ、食ってしまいたいくらいには。
「いきなり、なにを……」
「表面にかかってるのはスパイスミルクのアイシングで、ぴりっと舌が痺れるような辛みに、ラベンダーの優しさがプラスされてる。さっき生クリームも一緒に食べたよね、それがケーキ全体にほんのりとした甘みをもたらしてるの」
わたしはケーキを一口すくって食べた。
「安心できる味なのに、新しい。自然のような香りの余韻と重なり合うようにして、内側から焙煎したヘーゼルナッツのペーストがじゅわって口に広がって、コクを生み出してる」
芽野くんは呆然としている。
わたしは小さく舌を出すと、それを指差して笑んだ。
「わたし、“これ”だけは自信があるんだ」