まあ、食ってしまいたいくらいには。


それから芽野くんはケーキを完食してくれた。




「ありがとう甲斐田」

「いえいえ、今日のお礼だよ」

「それだけじゃなくて、俺を励まそうとしてくれたんだろ」

「え?」

「え?」


芽野くんはなにか勘違いしている。




「ええっと、本当にただのお礼のつもりだった……んだけど。ごめん、いまから励ましの言葉を考えるからちょっと待ってね」



ふたりきりのロビーに、ふ、と洩れた息が広がる。

芽野くんが笑っていた。




「甲斐田はすごいな」

「す、すごい?わたしが?」

「あのときも、単身で生徒会に乗り込んできたときは驚いた」

「ああ、その節はどうもお騒がせして……」



そうだ、あの場には芽野くんもいたんだもんね。

なんとなく気恥ずかしくなって照れ笑いを浮かべる。




「……芽野くんっ」

< 81 / 236 >

この作品をシェア

pagetop