丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
紀信「凱吾、鈴嶺おはよう!」
紀信が乗り込み、一番後ろに座っている凱吾と鈴嶺に声をかけた。

凱吾「おはよう」
しかし、凱吾の声しかしない。

紀信「鈴嶺は?」

宗匠「寝たんだと!」
鈴嶺は、凱吾の肩に頭を預けて眠っていた。

紀信「え?も、もう!?」

凱吾「乗ってすぐ寝た」

紀信「えー(笑)」

杏樹「でも、早すぎよね(笑)」
志田「だな(笑)」

凱吾「鈴嶺、ほとんど寝てないんだ」

宗匠達「は?」

凱吾「今日の旅行、楽しみにしてたみたいで興奮して寝れなかったみたいだ」

紀信「興奮して寝れなかったって…(笑)」
宗匠「ガキか!!」
杏樹「フフ…」
志田「可愛いね!」

そして佐木の運転で走り出した。


紀信「━━━━━でも、初めてだね!
旅行だなんて!」
宗匠「そうだな」

志田「五人ではないの?」
杏樹「そう言えばないわね」

志田「そうなんだね。
じゃあ、尚更邪魔だったね、俺」
杏樹「そんなことないわよ!
うーん…鈴嶺の中では、久史さんは“ただの”杏ちゃんの恋人だもん」

志田「あ、そうだね。
そんな認識みたいだね(笑)」

宗匠「不倫なのに」

杏樹「うっさいわね!」

紀信「でも、そうでしょ?
杏樹は愛人でしょ?」

杏樹「紀信まで!」

凱吾「まぁでも、もう少し“警戒心”は持ってほしい」

杏樹「は?鈴嶺のこと?」

凱吾「そうだよ」
宗匠「確かにな」
紀信「杏樹もだけど、鈴嶺はわかってない!」

凱吾「志田さんは…」
宗匠「裏の最大組織赤王の若頭」
紀信「わかってる?」

杏樹「大丈夫よ」

凱吾・宗匠・紀信「は?」

杏樹「久史さんは、少なくとも私達五人を裏切ったりしない」

凱吾「どうしてそう言い切れる?」

杏樹「久史さんの愛情は、本物だから。
それは、私が一番よくわかってる」

宗匠「だとしても、杏樹だけだろ?」

紀信「僕達のことは、裏切れるでしょ?
考えたくないけど、鈴嶺のことを傷つけることなんて容易い」

杏樹「できないわよ、久史さんには。
しないじゃなくて、できない」

凱吾「だから、なぜそう言い切れるんだ?」


杏樹「だって鈴嶺を傷つけたら、私が悲しむから。
久史さんを受け入れなくなるから。
そんなこと、久史さんがするわけない。
私が鈴嶺と縁を切って、久史さんだけを選んだらわからない。
でも私が鈴嶺の親友でいる限り、久史さんは“裏切らない”」

杏樹は、真っ直ぐ言い放った。
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