丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
紀信「ん?鈴嶺?」

鈴嶺「少し、付き合う!」

紀信「いいんだよ?
鈴嶺、眠そうだし寝なよ」

鈴嶺「でも、紀信くんが寂しそうなんだもん!」

紀信「………」

鈴嶺「ワイン、私も少しちょうだい!」
そう言って、キッチンにグラスを取りに行こうと立ち上がる。

━━━━━━!!!?
鈴嶺「え………」

鈴嶺は紀信に手を掴まれ、そのまま引き寄せられて紀信の腕の中にいた。


紀信「なん…で……?」

鈴嶺「え……紀信…く……?」

紀信「…………鈍感でいてよ。
じゃないと……僕は益々、鈴嶺から離れられないでしょ?」

鈴嶺「ごめん…なさ…」

ゆっくり紀信が腕を緩め、二人は向き直る。
鈴嶺の頬に触れる。

紀信「鈴嶺…」

いつもと違う━━━━━━

紀信のどこか色っぽい声と、男を感じる雰囲気。

酔ってる?
いや、でも……鈴嶺を見る目は、真っ直ぐで迷いがない。

鈴嶺「紀信く……」

紀信の顔が近づいてくる。

ダメ━━━━━!!!
でも、鈴嶺は固まったように身体が動かない。


━━━━━━━━━
━━━━━━━…………

すると…………
ガタン!!!!と、ドアが閉まる音が響いてきた。

ビクッと震え、紀信が我に返る。

紀信「……っあ!!?ご、ごめん!!!」

バッと鈴嶺を離し、距離を置くようにずれた。

鈴嶺「う、ううん…」

志田「あれ?紀信くんと、鈴嶺ちゃん?
起きてたの?
おっ!!
酒飲むなら、俺もいいかなー?」

志田がキッチンからグラスを持ってきて、ソファに腰かけた。

鈴嶺「あ、あの!私、ね、寝ます!」

志田「あ、そう?
おやすみ!」
鈴嶺「は、はい。おやすみなさい……!」

紀信「おやすみ…」


鈴嶺が二階に上がると、志田が真剣な眼差しで紀信に向き直った。

志田「紀信くん、ダメだよ」

紀信「え?」

志田「鈴嶺ちゃんのこと」

紀信「………見て…たんですか?」

志田「君の気持ちはわかる。
苦しいよね?
辛いよね?
……………でも“鈴嶺ちゃんのために”その気持ちは封印しなきゃだよ」

紀信「わかってます…」

志田「でも、さっき…止まらなかったよね?」

紀信「………」

志田「あそこで、キスしてたら…きっと君は止まらない」

紀信「………そう…ですよね……」

志田「一度外れたタガは、もう二度と元には戻らないから。
俺みたいになっちゃダメだ━━━━━━」
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