丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
宗匠「凱吾もそうだが……
おっさんは“死んでも、自分から杏樹を引き離すことはできない”
犯罪は平気で犯すことできるのに、杏樹を手放すことはできないんだ。
だから、手放す事ができるのは“杏樹”しかいない」

杏樹「そう…ね」

宗匠「安心しろよ。
お前が手放さない限り、おっさんは離れない」

宗匠の言葉に、杏樹が目を潤ませた。
宗匠「は?なんで、泣くんだよ!?」

杏樹「嬉しかったから!!」

宗匠「びっくりするじゃん!」

杏樹「宗匠!!」

宗匠「あ?」

杏樹「ありがと!!」

宗匠「フフ…あぁ!」

杏樹「宗匠」

宗匠「ん?」

杏樹「腕枕して?」

宗匠「はぁ!?
やだー!
疲れるもん」

杏樹「いいじゃん!して?今だけ!」

宗匠「………はぁ…はいはい…」
杏樹の布団に入り、杏樹の首の下に腕を滑り込ませた。

杏樹「フフ…ありがと!」

宗匠「あー、重い、しびれる、いてぇー」

杏樹「は?失礼しちゃうわね!」

宗匠「あ、寝んなよ?
つか、寝たら抜くからな!」

杏樹「はーい!
………………あ!キスでもする?(笑)」
杏樹が宗匠の方を向き、目を瞑った。

宗匠「しねぇーよ!」

杏樹「フフ…冗談だよ、バーカ!(笑)」

宗匠「はぁ!?」

杏樹「さっきの仕返しだよ!(笑)」

宗匠「むかつく!」

杏樹「でしょ?(笑)」

宗匠「犯すぞ、こら!!」

杏樹「フフ…犯せないくせに!(笑)」

宗匠「ほんっと、可愛くねぇ奴〜!!」

杏樹「鈴嶺だったら……」
宗匠「“宗くんの意地悪!”」

杏樹「……………って言うんだろうね(笑)
目をウルウルさせて」
宗匠「フッ…だな(笑)」

杏樹「フフ…あの子には、敵わないわ!(笑)」


そして夜が明け、旅館を出た宗匠と杏樹。
旅館の前に、スーツの軍団が待ち構えるように立ち塞がっていた。

宗匠「ん?」
杏樹「え……う…嘘…」

そしてその中から、一際恐ろしい雰囲気を醸し出した男が宗匠と杏樹を見据えていた。

志田「杏」

杏樹「なん…で…?」

志田「杏は俺を嫉妬させて、どうしたいの?」

杏樹「え?あ…」

志田「いいなぁ、宗匠くんと“二人で”旅行なんて。
俺も行きたいなぁ、杏と“二人で”旅行」

宗匠「杏樹、お前、言ってなかったのかよ!?」
杏樹「いちいち言うことでもないかと思って…」

宗匠「はぁ…お前なぁ…」

志田「杏」

杏樹「え?」

志田「俺、明日の夜まで仕事ないんだ」

杏樹「え?え?」

志田「“わかるよな?”」
志田の目が、鋭く光る。

杏樹「久史さ……」

志田「宗匠くん、悪いがここで解散にさせてくれ」

宗匠「ん。
じゃあな、杏樹」
手を振り去っていく。

志田「さぁ、杏。
“楽しもうな。俺と二人だけの旅行”」


杏樹は、志田と共に車に乗り込んだのだった。
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