丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
佐木「―――――お嬢様。入浴の準備終わりましたよ!」

鈴嶺「ありがとう!
佐木、お食事は?」

佐木「お嬢様がお休みになられてから、いただきますよ!」

鈴嶺「じゃあ、今召し上がって?
私はお風呂に入ってくるから!」

佐木「いえ!お嬢様がお休みになられてからにします!」

鈴嶺「相変わらず、頑固ね!(笑)」

佐木「申し訳ありません。
これは、譲れませんので!」

苦笑いをしながら、鈴嶺が風呂場に向かった。
佐木は寝室に向かい、鈴嶺の就寝の準備を始めた。

ダブルベッドとドレッサー、大きめの一人用のソファとテーブル。
すっきりした部屋だが、壁にはまるでモデルのような凱吾と鈴嶺の結婚式の写真が、大小合わせて十枚程飾られていた。

あえて、モノクロにしている写真達。

それがとても色っぽく映っていて、思わず見入ってしまう程だ。

鈴嶺「佐木?どうしたの?」
そこに、風呂から出てきた鈴嶺が入ってきた。

佐木「あ、お嬢様!すぐに、お休みの準備を…」

鈴嶺「いいよ、後は。
今から、凱くんに電話するの。
佐木はゆっくりして?
お風呂もそのままにしてるから、入ってね!
おやすみなさい……!」

佐木「あ…お嬢様……」
(もう少し、もう少しだけ…一緒にいたい…)

鈴嶺「佐木?」

佐木「あ、いえ…
おやすみなさいませ…」
丁寧に頭を下げ、ゆっくり部屋から出ようとする。
心なしか、肩が落ちていた。

鈴嶺「佐木!待って!」
佐木を呼び止め、前に回る鈴嶺。
そして、佐木の頬に触れた。

佐木「え?お嬢…様……?」

鈴嶺「どうしたの?
なんか、悲しそう…」

佐木「いえ、そんなことないですよ?」

鈴嶺に心配をかけてはいけない。
佐木は、安心させるように微笑み言った。

鈴嶺「無理して笑わないで」

佐木「え?」

鈴嶺「何かあるなら言って?」

佐木「………」
“どうして、鈍感でいてくれないんだ”

鈴嶺「佐木?どうし――――――え……」

佐木は、鈴嶺を引き寄せ抱き締めていた。
そして頬を擦り寄せた。

鈴嶺「佐木?どうしたの?佐木?」
佐木の背中をさする。

温かくて、柔らかい。
甘くて、いい匂いがする。

あぁ、やっぱり…俺はこの方(鈴嶺)が好きだ。

佐木は鈴嶺を離し、顔を覗き込んだ。

頬に触れ「可愛い」を囁く。
口唇をなぞり、そっと顔を近づけた。

鈴嶺「え……佐…木―――――」
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