丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
鈴嶺「あれ?これ……
あ!凱くん、忘れてる!!」

テーブルの下に、大きな封筒が落ちているのに気づいた鈴嶺。
凱吾が鞄と一緒に置いていたのを見ていた。

鈴嶺「届けに行かなきゃ!」

鈴嶺は急いで準備をし、封筒を抱きかかえてマンションを出た。

エントランスを出て、鈴嶺はキョロキョロする。
鈴嶺「あれ?どっちだっけ?」

すると、鈴嶺のスマホが鳴りだした。
鈴嶺「ん?佐木?
……………もしもし?」

佐木『お嬢様!どちらへ行こうとされてるんですか!?
お一人でお外に出てはいけません!』

鈴嶺(え?なんで、バレてるの?)
「あ、あのね。凱くんにお届け物を……」

佐木『でしたら、私が凱吾様にお届けに参ります。
とにかく、マンションへお戻りください』

鈴嶺「え?やだ!凱くんに会いたい!」
(せっかく、会えると思ったのに…)
鈴嶺は、この封筒を口実に凱吾に会えると喜んでいた。

佐木『……わかりました。
では、私がお連れします。
車を回しますので、そこでお待ちください』

鈴嶺「え?一人で大丈夫だよ」

佐木『本当ですか?
お一人で凱吾様の会社に行けるんですか?
お嬢様は、お一人でお外に出たことないのに?』

鈴嶺「そ、それは……」
佐木『すぐに、車を回しますので』
鈴嶺「うん…」


佐木の運転する車内。

鈴嶺「━━━━━どうしてわかったの?」
佐木「内緒です」

鈴嶺「どうして?」
佐木「言えません」

鈴嶺がつけているネックレスは、凱吾が結婚してすぐに贈ったネックレス。

“鈴嶺の為に特注で作らせた、とっておきのネックレスなんだ。
僕の鈴嶺に対する愛情がこもってるから、絶対外しちゃダメだよ”
そう言って、肌身離さずつけさせている。

そのネックレスには、GPSがつけてある。

マンションから出ると、佐木に連絡がいくようになっているのだ。
もちろんスマホにも、色々とアプリがいれてある。

これも全て、凱吾が仕込んだことだ。
(当然、鈴嶺はそんなこと知らない)


凱吾の会社に着き、鈴嶺は中に入る。
受付へ向かい、声をかけた。

鈴嶺「おはようございます。
私、副社長の妻の羽柴 鈴嶺と申します。
主人がこちらを忘れて家を出てしまったので、お渡ししたいのですが、呼んでいただけますか?」

「お、奥様…!
はい、少々お待ちください!」
内線で副社長室に電話をかけながら、受付の社員は鈴嶺を盗み見た。

“あの”副社長の奥さんって、こんな可愛い人なの?
意外………!

まさに“悪魔と姫”だ。
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