丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
それから二人は、ランチをする為外に出た。
二人は指を絡めて手を繋ぎ、ゆっくり歩く。
鈴嶺は、ずっとニコニコして凱吾を見ていた。

凱吾「ん?鈴嶺、どうした?」
鈴嶺「こんな真っ昼間から、凱くんに会えるなんて幸せだなぁって、噛みしめてるの!」

凱吾「フフ…そっか!」
鈴嶺「凱くんは?」
凱吾「ん?」
鈴嶺「凱くんは、幸せ?」

凱吾「うん!とっても。
……………ねぇ、鈴嶺」
鈴嶺「ん?」

凱吾「住江とどんな話をした?」
鈴嶺「どんな?う~んと、凱くんが凄いって話」
凱吾「僕の話?」

鈴嶺「うん!凱くんは、失敗しない完璧な人だって。
でも、努力を怠らない素敵な人って! 」
凱吾「そっか!
…………じゃあ…いいか……」

鈴嶺「ん?何?」
凱吾「ううん」

鈴嶺「あ、それでね!
住江さんも、素敵って話したの」

凱吾「は?」

鈴嶺「だって、こんな凄い凱くんの秘書さんだもん!
凱くんみたいに素敵!」

凱くんみたいに“素敵”

素敵?
素敵ってなんだ?

誰が?

住江が?

なんで?


凱吾は、ピタッと立ち止まった。

鈴嶺「え?凱くん?どうしたの?」

凱吾「鈴嶺、ダメだよ」

鈴嶺「え?」

凱吾「ダメ」

鈴嶺「え?え?何━━━━━━キャッ!!?」
そのまま、壁に押しつけられた鈴嶺。

凱吾の腕に閉じ込められた。
鈴嶺「凱くん、や…痛い!!」

凱吾「ダメ、鈴嶺」

鈴嶺「え?何が!?」
突然の凱吾の行為と、押しつけられた痛みから凱吾を睨み付けた。

凱吾「住江のこと……いや、違う。
僕以外のことを“素敵”だなんて言っちゃダメだ」

鈴嶺「え?どうして?」

凱吾「鈴嶺は“僕の”奥さんなんだ。
鈴嶺は、僕だけを慕って、頼って、甘えなきゃダメだ。
なのに、僕以外を素敵だなんて思ったら、僕以外の人間に頼るだろ?
百歩譲って、佐木だけは“僕のいない間だけ”頼って構わないけど、佐木以外はダメ!」

凱吾の鋭く、冷たい目。
刺すような視線。

鈴嶺「わ、わかった…ごめん…なさ…」
凱吾「ん」
そこで、ゆっくり離れた凱吾。
再び、鈴嶺の手を握った。

鈴嶺「凱くん…ごめんなさい…」

凱吾「わかったから。ほら、昼ごはん食べよ?
何がいいかな?
鈴嶺が好きなオムライスにしようか?」

微笑み言った凱吾に、鈴嶺はホッと肩を撫で下ろした。
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