丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
紀信の見合い
凱吾のマンションのチャイムが鳴る。

鈴嶺「あ、凱くん!出てー?」
凱吾「うん」
調理中の鈴嶺。
カウンターから眺めていた凱吾に言った。

凱吾「はい」
宗匠「来たぞ」

凱吾「うん。どうぞ?」
オートロックを開ける。

玄関に向かい、ドアを開けて待つ。

宗匠、紀信、杏樹が入ってきた。

宗匠「お邪魔ー」
紀信「お邪魔しまーす」
杏樹「鈴嶺ー、美味しそうな匂いね!」

鈴嶺「みんな、いらっしゃい!
ソファに座っててね!
もうすぐできるから!」

凱吾達五人は、月に一度五人で会うようにしている。
実和が亡くなったことで、鈴嶺が言いだしたことだ。

もう、あんな形で友人を失いたくない。

鈴嶺のそんな思いを受け、凱吾達は集まり食事をすることになった。
いつもは、何処かの店を予約して会っていたのだが、今回は鈴嶺が“お料理を振る舞いたい”と言った為三人を招待する形になった。

紀信「鈴嶺、これ!」
鈴嶺「あ!◯◯のババロアだぁー!ありがとう!
食後に食べようね!」

凱吾「貸して!冷蔵庫に入れておくから」
まるで奪うように取った凱吾。

紀信「ちょっ…凱吾!
そんな取り方……」
凱吾「は?」

宗匠「すぐ嫉妬すんだから(笑)」
杏樹「鈴嶺も大変ね!(笑)」


鈴嶺「さぁ、どうぞ~!」
美味しそうな料理が並ぶ。

凱吾達「いただきます!」

四人が、それぞれ口に入れる。

凱吾達(う……ま、不味い…)
ニコニコしながら、四人の反応を見ている鈴嶺。

凱吾(なんで、こんな不味いんだ?)
宗匠(え?これ、ただ肉焼くだけだよな?)
紀信(ど、どうしよう……不味くて、もういらない……
でも鈴嶺、いらないなんて言ったら傷つくよね?)

杏樹「鈴嶺」
鈴嶺「ん?」

杏樹「このお肉、何したの?」

鈴嶺「え?ワインを入れて焼くと、柔らかくなるって聞いたの~」

杏樹「はぁー、鈴嶺」
鈴嶺「え?」

杏樹「言ったわよね?料理下手なんだから、高度なことはやらないでって!
このお肉、とってもいいお肉なのに、鈴嶺が変なことするから無駄になったじゃない!
普通にすれば、何にも問題なかったのに……」

鈴嶺「え?美味しくない?」

杏樹「鈴嶺、あーんして?」
鈴嶺が、口を開けると杏樹が肉を一口サイズに切って入れた。

杏樹に“どう?”と聞かれた鈴嶺。
口元を押さえて言った。

鈴嶺「美味しくない……」
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