丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
鈴嶺の苦しみ
知里「━━━━━━わかんなくなっちゃった……」
運転手「どうしますか?」

知里「ここで、降ろしてください」
知里はその場で降り、辺りを歩いて回るが完全に見失った。

何がしたいわけでもない。
ただ、鈴嶺のことを把握したいと思ったのだ。

しかたなく知里は、元の場所に戻るのだった。


どうしても、紀信への想いを諦めきれない━━━━━━
その想いはいつしか、鈴嶺への妬みに変わっていった。

知里は、ほぼ毎日のようにあのパンケーキの店に通った。
ここにいれば、また鈴嶺が来るのでは?と思ったからだ。



約、半月後━━━━━━

案の定、鈴嶺が現れたのだ。
杏樹と二人で来店してきた。

知里は、二人に気づかれないように二人を観察できる所に移動した。

鈴嶺「志田さんとはどう?」
杏樹「相変わらずよ!
なんだかんだで、幸せ!」

鈴嶺「そっかぁー!良かった!」
杏樹「まぁ、鈴嶺と凱吾には負けるわね!(笑)」

鈴嶺「フフ…」
杏樹「二人、ラブラブだもん!
見てるこっちが恥ずかしいわ(笑)」

二人の幸せそうな会話を聞いていると、嫉妬心が勢いよく膨らんでいく。

鈴嶺に対する嫌悪感が、時間と共に増していた。


この人さえいなければ、紀信さんが苦しむことがなかった。

この人さえいなければ━━━━━━


鈴嶺と杏樹が、店を出た。
そのまま、デパート内に入っていく。

知里もついていく。

鈴嶺と杏樹が、下りのエスカレーターに乗る。

四・五段あけて、知里も乗る。



エスカレーターから、落ちればいいのに………



タタタ……ドン━━━━!!!!!

鈴嶺「え………」

杏樹「鈴嶺!!?危な━━━━━━!!!?」

ガタタタ………ダン━━━━━!!!!


キャァァァーーーーー!!!!?


気づくと血まみれの“杏樹”と、傍で震え泣き叫ぶ鈴嶺がいた━━━━━━


鈴嶺「杏ちゃん!!
杏ちゃん、しっかりして!!!
誰か……誰か、救急車ぁぁぁーーーー!!!」




タタタ……と、逃げてきた知里。

震えている両方の手の平を見つめた。


突き落としてしまった━━━━━


まだ、手の平に鈴嶺の背中の感触が残っていた。
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