丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
それから一週間経った━━━━━━

知里は、毎日のように恐ろしい夢を見て目を覚ますことが多くなった。

鈴嶺を突き落とした、あの場面の夢を…………

震える自分自身を抱き締める。

なんて、恐ろしいことをしてしまったのだろう。

“エスカレーターから落ちればいいのに”と思ったときにはもう……突き落としていたのだ。

知里「誰にも、見られてないよね……?」

杏樹がどうなったか知らないが、完全に殺人だ。

知里は、犯した罪の重さに押し潰されそうになっていた。

自首、したほうがいいよね……?

そう思うのに、身体が動かない。

しかしこのまま黙っていれば、時間が解決してくれるのでは?と悪い考えが浮かんていた。

人がほぼいなかったので、誰にも見られてないだろう。と━━━━━━



そんな時だった━━━━━━

知里母「知里。南波さんのお友達って方が見られてるわよ」

知里「え………」

だ、誰!!?
もしかして、突き落としたのがバレていた!!?

知里は、怯えながらリビングへ向かった。

そこには、鈴嶺と佐木がいた。

鈴嶺「初めまして。私、南波 紀信さんと仲良くさせていただいている、羽柴 鈴嶺と申します」

羽柴!?
羽柴って“あの”羽柴財閥の!!?

鈴嶺「後ろにいますのが私と主人の執事をしてます、佐木です」

佐木「鈴嶺様がご実家の宝正家にいる時から仕えております、佐木です。
一度、私達とは◯◯(パンケーキの店)でお会いしましたね。
覚えていらっしゃいますか?」
ソファに腰かけている鈴嶺の後ろに控えるように立っている佐木。
鋭い視線で、知里を見据えている。

知里「は、はい」

宝正って……あの!?
紀信さん、凄い人達と知り合いなんだ。
凄っ!!?

知里は、ただただ…鈴嶺に見入っていた。


鈴嶺「単刀直入に申し上げます。
先週、◯◯デパートにいらっしゃいましたよね?」

知里「え?」
知里は、一瞬で考えをめぐらせた。

正直に話すべきか、嘘をつくべきか。

鈴嶺「三階から降りるエスカレーターで、私…どなたかに突き落とされたんです。
隣にいた親友が庇ってくれたので助かりましたが………」

知里「その方はどうなったんですか!?」

すると、鈴嶺の目から涙が溢れた。

知里「え………まさか…!?し、死ん、だ……?」
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