丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
凱吾「宗匠に話しても、わからないから言わない」

宗匠「は?」

凱吾「“愛情”がわからない宗匠に話しても、わからないだろ?
話すだけ無駄だ」

宗匠「だったら、今日俺が鈴に協力してもらった理由を話しても、凱吾にはわかんねぇだろうから言わねぇよ!」

凱吾「だからって………
でもなんで、鈴嶺なんだ?
杏樹でいいだろ?」

宗匠「そうだな。
でも鈴なら、相手が“確実に”諦めると思ったから」

凱吾「は?」

宗匠「杏樹も、確かに美人だが……
鈴はそれこそ、天性の才能みたいなもんだろ?」

凱吾「そうだな。
贔屓目なしに、鈴嶺は完璧な容姿だな」

宗匠「突然だったから、凱吾には事後報告になったが……
内緒にするつもりはなかった。
まぁ、お前が信じるかはわかんねぇが。
悪かったよ、お前の嫁さんを勝手に連れ出して」

凱吾「………」

そこに、遠慮がちな鈴嶺の声が聞こえてきた。

鈴嶺「……凱く…」

凱吾は目を瞑り、ふぅーと息を吐いて微笑み振り返った。
凱吾「鈴嶺、ダメだよ。車に行ってて?」

鈴嶺「凱くん、ごめんなさい!
宗くんならいいかなって思ったの。
幼馴染みだし、お友達だし。
だから━━━━━━」

凱吾「わかってる!大丈夫だから!
車に戻って、待ってて?」

その言葉に鈴嶺は頷き、再度店を出ていった。


凱吾「宗匠」
宗匠「ん?」

凱吾「今回は、許してあげる。
その代わり━━━━」
宗匠「言わねぇよ!スマホのこと、鈴嶺に!
つか、言えねぇよ…
あんなの、常に監視されてるのと変わんねぇんだから!」

凱吾「監視か…
そうかもね。
でもそうでもしないと、鈴嶺はすぐに変な輩に連れ去られるから。
一人で外出もしたことない、箱入り令嬢だし」

宗匠「だからって……
…………やっぱ、恋愛は苦しいことばっかだな」

凱吾「そう?
それもあるかもだけど、やっぱり一緒にいると“幸せ”を感じられるよ?」

宗匠「でも凱吾は実際、毎日不安なんだろ?
今頃、鈴は何してんだろ?とか常に心配しなきゃじゃん!
今だって、GPS見てびっくりしたんじゃね?
だから、ここに駆けつけてきたんだろ?」

凱吾「そうだな」

宗匠「俺は、そんなの御免だ。
だって凱吾が鈴を縛るのと同時に、凱吾自身も縛られてる。
そんなの、息苦しい……!
自由が一番!」

そう言って宗匠は、伝票を持ちレジに向かった。

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