丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
悪魔と若頭
凱吾は基本的に、仕事中“しか”鈴嶺と離れない。

なので仕事終わりの飲み会や、接待に行かない。
凱吾の中心は、鈴嶺。

鈴嶺との二人で過ごす時間の為に、日々生きている。

凱吾父「━━━━は?お前、ワガママもいい加減にしろ!」
凱吾「は?ワガママ?
接待に行かないことの、何処がワガママなの?」

凱吾父「これも必要な仕事だ!」

凱吾「は?
クラブで酒を飲みながら女と話をすることの、何処が仕事なの?
仕事をするのに、酒も女も必要ない」

凱吾父「そうだな。仕事をするのには、必要ないな。
しかし、仕事を滞りなく進めるには必要だ。
とにかく、来い!
鈴嶺ちゃんにも、伝えてる」

凱吾「は?鈴嶺に?」
凱吾は、その場ですぐ鈴嶺に電話をかけた。


鈴嶺『凱くん!!嬉しい!
お仕事で遅くなるってお義父様に聞いたから、帰ってくるまで声聞けないと思ってたから!』

凱吾「うん。ごめんね。
できる限り、急いで帰るからね!」
鈴嶺『うん!』

凱吾「一人にしてごめんね……」

鈴嶺『大丈夫だよ!
久しぶりに、パパやママとお外でお食事するの!
だから凱くん、終わったら連絡して?
それに合わせて、私もマンションに帰るから!』

凱吾「そうか。良かった。一人じゃなくて……
わかった。終わったら、連絡する!」



そして凱吾は、父親と他役員数名と共にクラブへ向かった。

凱吾「あ、ここ…」

杏樹母「いらっしゃいませ、羽柴様!
…………あら?凱吾くんも!?
初めてよね?
来てくれたの!」

凱吾「はい。こんばんは」

杏樹母「フフ…いらっしゃいませ!
さぁ、どうぞ?」

VIP席に通される。
杏樹母「皆様、今日はありがとうございます!
今、女の子を……あ、杏樹も呼びますわね!」

しばらくして、杏樹が席についた。
杏樹「いらっしゃいま━━━━━え?凱吾!?」

凱吾「………」

杏樹「珍しい!鈴嶺は?」

凱吾「は?」
鋭い視線で杏樹を見る。

凱吾父「おい、凱吾!」

杏樹「怖っ!(笑)
いいんですよ、おじ様!
……………おじ様方は、今日楽しまれてくださいね!」



それから“凱吾以外は”和やかに、酒と話が進んでいく。
そこにボーイが杏樹に耳打ちしてきた。

「杏さん、志田様が来られましたよ」

それを聞いて、杏樹の表情がパッと明るくなった。
その微妙な変化を見て、凱吾は“あ、来たんだ”と察する。
< 44 / 141 >

この作品をシェア

pagetop