丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
更に時間が経ち、凱吾は鈴嶺に電話しようとしていた。

とにかく、早く帰りたい。
鈴嶺に会いたい。

なかなか父親達が帰ろうとしないので、嫌気がさしていた。

声だけでも聞きたいと思い、スマホを握りしめてトイレ前の廊下に向かった。

スマホを操作していると……

「…………凱吾くん?」

凱吾「え?あ、志田さん」

志田「へぇー、君。
クラブに来たりするんだね!」

凱吾「今日が初めてです」

志田「そっか!
接待、とか?」

凱吾「はい。でも、その必要性がよくわかりませんが!」

志田「フフ…だろうね!
君には、わからないだろうね」

凱吾「はい。わかる必要もないですが」

志田「でも君は将来、羽柴ホールディングスの社長になるんだろ?
その必要性を、ちゃんと理解する必要あると思うよ?」

凱吾「………」

志田「あ!ねぇ!
俺の席で、一緒に飲まない?」

凱吾「は?」

志田「鈴嶺ちゃんの話をしよう!」
凱吾が握りしめているスマホを指差しながら、意味ありげに微笑んでいる志田。

凱吾「………」

志田「その分だと、すぐに席に戻らなくてもいいんだろ?
少し付き合ってよ!
杏は、他の席に行っちゃって寂しいんだよ!
それに、俺以外の男への接客なんて見たくないし!」

凱吾「少しなら…」

父親達のくだらない話を聞くよりは、志田と鈴嶺の話をする方がマシだ。

凱吾は頷き、志田がいる席に向かった。


志田「━━━━━凱吾くん、焼酎飲めるよね?」
凱吾「はい」

志田「じゃあ…ん!」

凱吾の前に、焼酎を注ぎ置く。

凱吾「ホステスをつけないんですか?
志田さんの部下もいないみたいですが……
志田さんは、赤王の若頭でしょ?
一人っておかしくないですか?」

志田「俺は、杏に会いに来てる。
杏以外は、必要ないよ」

凱吾「………へぇー、それはわかるな…」
志田の言葉に、感心したように見つめる。

志田「だろ?
凱吾くんとは、気が合いそうなんだよなぁー」

凱吾「は?
そうゆうの、僕は迷惑です」

志田「…………
フッ…さすがだな……!」

凱吾「は?」

志田「この俺にそんなこと言えるのは、君くらいだよ(笑)」
ケラケラと笑って、酒を飲み干す。


凱吾「僕は、怖くないので。志田さんのこと。
本気を出せば、あんたを一生杏樹に会えないところに葬ることができる」
焼酎を自身のグラスに注ぐ志田を真っ直ぐ見る。


志田「そうだね。
……………じゃあ、どうしてそれをしないの?」
志田は酒を注ぎ口をつけて、視線だけ凱吾を見て言った。
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