丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
20分程して━━━━

高級車が凱吾の前でゆっくり止まる。
運転席から佐木が出てきて、後部座席を開けた。

佐木「凱吾様、お帰りなさいませ。
お待たせいたしました」

凱吾「ん。ありがと」
乗り込むと、鈴嶺は眠っていた。

凱吾「ん?鈴嶺?」

佐木「お車に乗ってしばらくして、眠ってしまわれて……」
運転席に乗り込んだ佐木が、後ろを振り返り言った。

凱吾「そっか」
鈴嶺の頭をそっと優しく自身の肩に乗せ、微笑んだ。

佐木「眠らないように頑張ってらっしゃったんですが、眠気には勝てなかったようです(笑)
今日は、旦那様や奥様とかなり歩き回ったので」

凱吾「そう。
…………ん?ショッピングしたの?」
ふと、助手席に目が行き、紙袋を数袋見つけた凱吾。

佐木「はい。奥様とお洋服やバッグ等を買われたようです!
凱吾様にも、何か買ったようでしたよ!」

凱吾「そうか。楽しみだな」
鈴嶺の頭を、ゆっくり撫でた。



佐木「━━━━凱吾様」
凱吾「ん?」

佐木「今日の接待は、クラブに行かれたのですか?」

凱吾「え?あ、あぁ。
しかも、◯◯(杏樹母の店名)だった」

佐木「そうなんですね」

凱吾「何だ?」

佐木「お嬢様、眠ってしまわれて良かったです…」

凱吾「は?どうゆう意味だ?」

佐木「お嬢様は、凱吾様の今日の接待。
接待は接待ですが、外でのお食事だと思っていらっしゃいます。
クラブに行ってるなんて、思ってないと思いますので」

凱吾「え?」

佐木「………なので、凱吾様」

凱吾「ん?」

佐木「マンションへ帰ったらすぐに、着替えた方がいいかと。
できる限りお嬢様を起こさずマンションへ連れ帰り、お嬢様が寝ている間に」

凱吾「は?」

佐木「女性物の香水の香りが、凱吾様からかなり匂いますので……」

凱吾「え……!?
わかった。そうする」


自宅マンションに着き、鈴嶺を抱きかかえて中に入る。
佐木は、荷物を持って凱吾に続いた。

エレベーター内。
凱吾「ねぇ、そんな匂う?」
佐木「はい、はっきりと」

凱吾「マズいな…」

佐木「女性は、香りに敏感ですもんね」


自宅に着き、鈴嶺をソファに寝かせた。
凱吾「荷物はそこに置いておいて。
後は、僕がするから」

佐木「はい。
お疲れ様でした。
失礼いたします」
丁寧に頭を下げ、佐木が出ていく。

凱吾はシャワーを浴び着替える為、一度鈴嶺にキスをしようと顔を近づけた。

すると鈴嶺が「ん…」と身動ぎ、ゆっくり目を覚ました。
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