丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
江原は弁解の余地もないまま、凱吾になぶり殺された。

志田や他の組員達はただ……それを見ていた。


いや━━━正確には、動けなかったのだ。


とてつもない殺気に包まれた凱吾。
江原の反撃も許さない俊敏な動きと強さ。

志田達は、見ていることしかできなかった━━━━━━


凱吾「………後は、お前等で処理しろ。
━━━━━あぁ…そうだ……
僕を警察に付き出してもいいけど、その代わりこの組も纏めて警察行きだから。
わかるよね?
どうするのが利口なことか。
クズはクズらしく、ない脳みそをフル回転させろ」

言い捨てるように言って、部屋を後にした。



「━━━━若、これ…」
「あの江原が、ここまで殺られるなんて」
江原は武闘派と言われる程の、強い男。
志田の護衛もやっていた程だ。

そんな江原が、反撃できないまま殺られた。
組員達は、戸惑いを隠せない。


「━━━━━羽柴 凱吾。
やはり、噂通りのとんでもない男ですね……」


志田「あぁ。
そうだな。
まさに“悪魔”だな………!」


だから言ったんだ━━━━

“鈴嶺ちゃんには、何があっても手を出すな”と。



志田は、江原の亡骸を見て心の中で呟いた。




一方の凱吾。
自宅マンションに帰りつくと、佐木がリビングに待機していた。

佐木「お帰りなさいませ」
丁寧に頭を下げる。

凱吾「ん。鈴嶺は?」

佐木「まだ、眠ってます」

凱吾「シャワーを浴びてくる。
もし、鈴嶺が起きたらよろしく」

佐木「はい」

風呂場に向かう凱吾を見つめる、佐木。

真っ赤な右手。

絶対零度の雰囲気と視線。


佐木「本当に……恐ろしい方だ…………」


そして………またしばらくして、鈴嶺が目を覚ました。
鈴嶺「ん…」
凱吾「鈴嶺!?」
佐木「お嬢様!?」

心配そうに見つめている、凱吾と佐木。
それを認めた鈴嶺の瞳が、あっという間に潤んだ。

鈴嶺「凱くん!!佐木!!」
ガバッと起きて、凱吾に抱きつく。

凱吾「もう、大丈夫だからね!」
鈴嶺「凱くん…凱くん…」

凱吾「大丈夫!大丈夫だよ!」


リビングに移動した、凱吾達。
佐木「お嬢様。申し訳ありませんでした!
私がいながら、こんなことになってしまって!」

鈴嶺「ううん!私が、勝手にお店を出たからなの。
ごめんなさい!
凱くんも、心配かけてごめんなさい!」

佐木「そんな……」
凱吾「ううん。
でももう、一人になったりしないで?
わかった?」

鈴嶺「うん」

その日の晩。
鈴嶺「…………あの、凱くん」
凱吾「ん?」
凱吾に腕枕され、安心させるように背中をトントンと叩いてもらっている鈴嶺。
顔を赤くして、見上げる。

鈴嶺「あの…/////」

凱吾「ん?どうしたの?」

鈴嶺「……//////」

凱吾「ん?鈴嶺?
もう、寝な?
怖い思いしたんだから、ゆっくり休んで?
大丈夫。ずっとトントンしててあげるから」

鈴嶺「今日ね。とっても怖かったの…」

凱吾「うん。そうだよね」

鈴嶺「身体が、震えるの」

凱吾「うん。だから、ずっとトントンするよ?」

鈴嶺「………だからね…」

凱吾「うん」

鈴嶺「凱くんに…////」

凱吾「ん?」

鈴嶺「その…」

凱吾「うん。言って?何でもするよ?」

鈴嶺「だ、だ、だだだ…
抱かれたら、大丈夫になると思うの!」

凱吾「………え/////」

鈴嶺「だから…あの…////」

凱吾「………いいよ」

鈴嶺「え?凱くん?」

凱吾「……ったく…////
ダメだよ、そんな可愛い煽り方しちゃ…////」

凱吾は鈴嶺を組み敷き、ゆっくり頬をなぞった。
そして、鈴嶺に顔を近づけながら囁くように言った。


凱吾「僕があんなクズのことなんか、全部…忘れさせてあげるよ………!」
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