丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
不倫と片恋
そしてこちらは紀信と杏樹。

駅前で、紀信がキョロキョロして杏樹を待っていた。
紀信「遅いな…」

すると、パタパタ…と杏樹が駆けてきた。

杏樹「ごめん!!紀信!
遅くなっちゃった!」

紀信「ううん!
でも、良かった!事故に遭ってたらどうしようって心配してたんだ」

杏樹「………」

紀信「ん?杏樹?」

杏樹「ほんっと、紀信って良い男ね!」

紀信「え?え?」

杏樹「フフ…」

紀信「は?からかってるの?
………ったく…
だいたい良い男ってのは、凱吾や宗匠のことを言うんだよ?」

杏樹「違うわ」

紀信「え?」


杏樹「わかってないわね!
まぁ…宗匠はともかく、凱吾は良い男ではないわ」

杏樹は、真剣に紀信を見つめる。
そして続けて言った。

杏樹「誠実で賢くて、確かにカッコいい。
でも…冷たくて、ワガママで融通が利かない」

紀信「確かにそうだね……」

杏樹「それに、紀信は自分の魅力がわかってない。
いつも凱吾や宗匠といるから、紀信は目立たないってだけ。
あの二人……いや、鈴嶺もだけど、天性の才能みたいに容姿が完璧だから」

紀信「そっか!
なんか、ありがとう!」

杏樹「あーあ!なんで、鈴嶺は凱吾を好きになっちゃったの~」

紀信「え?」

杏樹「だって!絶対零度の凱吾よ?
鈴嶺が、可哀想だわ!」

紀信「まぁまぁ…
凱吾は、鈴嶺“だけには”良い男なんだから、大丈夫だよ!きっと!」

杏樹「はぁー、まぁね……(笑)
だから、別れさせられないのよね(笑)」

紀信「でも、それを言うなら…
杏樹だって、そうだよ?」

杏樹「え?」

紀信「不倫!
僕達的には、別れさせたいんだよ?本音は」

杏樹「あ…そう…よね(笑)」



そして二人は、杏樹母のクラブに向かった。

そもそもどうして紀信と杏樹が会っているのかと言うと、今日は杏樹母のクラブでは同伴出勤が必須の日。

杏樹は基本的に、同伴もアフターもしない。

志田と付き合うと決めた時に、自分は志田に全てを捧げるとの意思を示す為に決めたことだ。

その為、いつもは志田に同伴をお願いしていた。

しかし今日急に、どうしても仕事で外せなくなったと言われ、紀信に頼んだのだ。
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