丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
紀信は、固まっていた………

思いがけない、不意の杏樹の行動。
杏樹の甘い匂い。
肩から感じる、温かさと柔らかさに。


杏樹「━━━━ねぇ」

紀信「は、はい!」
更に身体に力が入る。

杏樹「フフ…そんな、緊張しなくても…」

紀信「だ、だって…/////」

杏樹「このまま、聞いてくれる?」

紀信「う、うん」

杏樹「ただの独り言だから、聞き流してね!」

紀信「うん」


杏樹「━━━━私…実は、10年振りに紀信に会って、かなりびっくりしたのよ。
素敵な大人の男性になってて……
中学卒業して、鈴嶺とは頻繁に会ってたし、凱吾とも鈴嶺を通じてたまに会ってた。
宗匠とも、それなりに会ってたし。
紀信と実和には会ってなかったから、どうしてるかな?っていつも気にはなってたけど、会うことなくて……
紀信に再会して、少しときめいた!
…………たぶん、久史さんがいなかったら……
好きになってたと思う」

紀信「杏樹…」

杏樹「………なーんて(笑)
よし!紀信!
今日は、飲み明かそ~!」

バッと顔を上げて、紀信に微笑んだ杏樹。
酒をグッと飲んだ。


結局、閉店ギリギリまで飲んだ二人。
杏樹は、かなり酔っぱらっていた。

杏樹「紀信~」

紀信「ほら、杏樹!しっかりして!」

杏樹「歩けなーい!
抱っこして~」

紀信「………ったく…はい!おんぶするから!」
杏樹の前にしゃがみ、背中を向ける。

杏樹「フフ…ありがとー」

紀信「よいしょっと!!」

杏樹「フフ…楽しい~!」

紀信「もう(笑)」

杏樹「重い?」

紀信「重い……」

杏樹「嘘!!?」

紀信「嘘ー!(笑)」

杏樹「え?!?」

紀信「フフ…そこまでないよ!
思ったより、軽い!」

杏樹「もう!!紀信のバカ!!」

紀信「フフ…だって!(笑)」

杏樹「フフ…」
紀信「フフフ…」

二人は、笑い会うのだった━━━━━━


そして数時間後の夜明け。
杏樹の自宅マンション。

玄関の鍵が、ガシャンと開く。

ドアが開いて、志田が入ってくる。
(志田は、合鍵を持っているから。
普段はあまり合鍵を使わず、杏樹に入れてもらうが嫌な予感がして合鍵を使い入った)

玄関から続いている廊下。

転々と散らばる、杏樹の服。
歩きながら、脱いだようだ。

その服は、寝室に繋がっていた。

ゆっくり、寝室を開けた。


杏樹と“紀信”が、寄り添って眠っていた━━━━━━
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