丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
杏樹はベビードール姿で、紀信は服を着ている。

見た感じ“何かあった”ような風には見えない。

杏樹と紀信では“何か”はあり得ないだろう。

杏樹が自分を愛してくれていることはちゃんと感じているし、紀信は鈴嶺を想っていることも明白。

しかし言葉にできない嫉妬心が、志田を襲っていた。


志田が、真っ黒な雰囲気を漂わせて二人を見つめていると………

んんっ…と、杏樹が目を覚ました。
そして、ゆっくり起き上がった。

杏樹「………頭…痛い……
………………
…………ん?なんで…紀信?」

杏樹は、隣にいる紀信を見て固まる。

志田「杏」

杏樹「へ?え……!!?久史さ…なん…で…!?」

そこで杏樹は、ドア前で恐ろしい雰囲気を醸し出している志田に気づいた。

志田「杏。
俺は、お前の俺への愛情を信じているよ。
信じてる。
でも、この状況の説明して?」

杏樹「久史さ……」

説明と言われても、覚えていない━━━━━━

紀信と居酒屋に行って、途中までしか覚えていないのだ。
どうやって帰ったのか、どうして紀信がいて、同じベッドで寝ているのかがわからないのだ。

志田「杏」

杏樹「あ、えーと……」

志田「言葉に詰まるってことは“何か”あるの?
俺に言えないこと」

杏樹「ううん、そんなことは…
あの、久史さ━━━━━」

そこで、紀信が目を覚ました。
紀信「ん……っ…」

杏樹と目が合う。

杏樹「き、紀信…」
紀信「━━━━━あ!!杏樹!?」

志田「おはよ!」

紀信「え!?志田さん!?」

志田「二人とも、起きてリビング!
杏は服、着てから!」



そして、ソファに座り対当している紀信、杏樹、志田。

志田「とりあえず、全部聞かせて?
俺は、二人の関係を疑ってるわけじゃない。
ただ、なんでこんなことになったのか知りたい」

杏樹「昨日、同伴日だったでしょ?」

志田「うん。それで、紀信くんに頼んだんだろ?
杏、言ってたもんな。
それで?」

杏樹「紀信の帰る時、店の前までお見送りしたら……」

志田「うん」

杏樹「………」

志田「ん?杏?」

杏樹「………」

紀信「志田さんを見かけたんです!」
言いにくそうにする杏樹の代わりに、紀信が言った。

志田「俺?
………………あー、あの時かな?
俺の部下の娘を落ち着かせてた時、杏の店の近くにいたな」


紀信・杏樹「落ち着かせてた?」
思わず、紀信と杏樹の声が揃って出た。
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