丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
志田「そうだよ。
傘下の部下の娘は、俺のこと兄貴みたいに慕ってくれててさ。
俺も妹みたいに思ってるんだ。
その子の恋人が昨日、病気で亡くなってな。
ずっと闘病中で、長くないって聞かせられてたんだが……
昨日、突然逝ったんだ。
それで杏の同伴も行けなくなったんだ」

杏樹「そうだったんだ……」

紀信「じゃあ、女性を抱き締めて頭を撫でていたのって……」

志田「は?二人とも、見てたのか?」

紀信「は、はい」

志田「そうか……
そうだ。部下は違う仕事でこっちに来れなかったから、俺が代わりに落ち着かせてたんだ。
…………って…もしかして、杏はそれを見て浮気とでも思ったっつうこと!?」

杏樹「あ、いや…その…」

志田「あのなぁ!
俺は、浮気なんかしねぇよ!
…………っつうか、不倫中の俺には説得力ないが……
杏のことは、本気なんだから!
離婚ができないだけで、俺は杏しか愛してない!!」

紀信「あ、ほら!
好きな人が自分以外の女性を抱き締めてたら、不安にはなりますよ!」

志田「まぁ、そうだな…」

紀信「それで、杏樹を飲みに誘ったんです。
杏樹、結構飲んじゃって……
杏樹を送って、もちろん玄関までで帰る予定でした。
でも、杏樹が━━━━━━」



杏樹『━━━━━もう少し、付き合って!』
紀信『は?何言ってんの?
僕、一応男だよ?』

杏樹『は?あり得ないじゃん!お互いに』

紀信『そうだけど……』

杏樹『ね?はいどうぞ、あがって~』

杏樹は、服を脱ぎながら寝室に向かう。

紀信『は?ちょっ…////杏樹!!?』
紀信は思わず、服を拾い杏樹に着せようとする。

杏樹『ちょっと!!何やってんの!!?
そんなのいいから早く!!』

紀信はそのまま引っ張られるように、寝室に連れていかれた。



紀信「━━━━ベッドで腕枕して、トントンしてって言われて、私が寝たら帰っていいからって言われたからその通りにしてたら、僕もそのまま……」

志田「寝てしまったと……」

紀信「はい…すみません…
僕も、かなり飲んでたから…」

志田「杏に付き合わされたんだろ?」

紀信「はい…」

志田「はぁー」
志田が、心の底から呆れている。

紀信「すみません!!
誓って、杏樹には手を出していませんから!」

志田「大丈夫だよ!俺は、疑ってないから!
紀信くんは、そんなことができる男じゃない。
頼まれても、できない人間。
俺が呆れてるのは、杏のこと!」

杏樹「だよね……
ごめんね。
紀信も、ごめん…」

杏樹は、落ち込んだように二人に頭を下げた。
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