丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
そして帰りの宗匠達。

雷太「良かったな!」
束茶「鈴嶺ちゃんの存在、スゲーな!」

宗匠「………」
紀信「………」

雷太「宗匠?」
束茶「紀信もどうした?」

宗匠「いや、なんか……」
紀信「妙に、呆気なかったなって」

雷太・束茶「は?」

宗匠「確かに、凱吾は“鈴のためなら”意見を変えたりする奴だ」

紀信「でも今回みたいなのって、絶対受け入れないはずなんだ。
だってあの人達、営業妨害してたし、何より凱吾の胸ぐら掴んでたでしょ?
凱吾って、自分の中で他人が“踏み込んでいい領域”っていうのがあって、それを土足で踏み込まれることを凄く嫌うんだ」

宗匠「鈴だけ。
凱吾に踏み込んでいい人間は。
俺達や両親でさえも、嫌がる」

雷太「………で、でもよ!
凱吾、俺達の前で会社の奴に連絡してたじゃん!」
束茶「そうそう!
だから、二人の思い過ごしだよ、きっと!」

宗匠・紀信「だったら、いいけど……」



一方の凱吾。

凱吾「━━━━━じゃあ、住江。頼む」
住江『はい』

スマホを操作し、住江との通話を切る。

凱吾「はぁ…
めんどくさい。
宗匠達も、余計なことをしてくれたもんだな…
これじゃ、二度手間だ!」

そう。
宗匠と紀信の言っていた通り、凱吾が受け入れるわけがない。

再度住江に連絡し、あの二人の男性は会社を退職に追いやられた。


コンコンとノックが響いて、遠慮がちの鈴嶺の声が聞こえてくる。

鈴嶺「………凱くん、凱くん」

凱吾は深呼吸をして、雰囲気を柔らかくする。
そしてドアに向かった。

凱吾「ごめんね、鈴嶺」
鈴嶺「電話、終わった?」

凱吾「うん、終わったよ!」
鈴嶺「じゃあ、今度は私が凱くん独り占めしていい?」

凱吾「うん、もちろん!」
両手を広げると、鈴嶺が嬉しそうに抱きついた。

凱吾も抱き締めると「僕も、独り占めしたい…」と呟いた。


もう、誰の目にも触れさせないように………

そうすれば、宗匠達との関係も絶つことができる。

そうすれば“余計な言葉を”鈴嶺の耳に入れずに済む。

そうすれば、鈴嶺は“僕だけを”信じて、頼って、依存してくれる。



“羽柴 凱吾には手を出すな”
< 87 / 141 >

この作品をシェア

pagetop