丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
五人の旅行 With 志田
季節は秋━━━━━━
肌寒くなってきた頃。
鈴嶺「凱くん、行ってらっしゃい」
凱吾「うん」
鈴嶺「早く…帰ってきてね…」
いつものように、凱吾のジャケットを小さく握り見上げる。
凱吾「うん。何かあったら、いつでも連絡しておいで?」
実は凱吾は、この時間が嫌いじゃない。
鈴嶺が、自分を求めてくれてることが目に見えるから。
鈴嶺の“自分への依存”が、凱吾に安心を与えるのだ。
凱吾「あ!そうだ!
今日、気を付けなよ?」
鈴嶺「え?あ、うん。
でも大丈夫だよ?
志田さんがいるし」
凱吾「鈴嶺」
鈴嶺「え?」
凱吾「“あの事”忘れたの?」
鈴嶺「え……」
鈴嶺の脳裏に蘇る、恐怖。
デパートのエレベーター内。
煙草と酒の匂いをさせた、江原。
吐き気がする程の口唇の感触。
鈴嶺の、凱吾のジャケットを握る力が強くなる。
凱吾「あのクズは、志田さんの部下だよ?」
鈴嶺「わかっ…て…るよ?」
凱吾「僕は、一生、許さないから━━━━━」
そして、鈴嶺は志田と街にいた。
鈴嶺「ここなんか、どうですか?」
志田「おっ!!いいね~!」
鈴嶺「杏ちゃん、きっと喜びますよ?」
二人は旅行代理店にいて、パンフレットを見比べていた。
志田に、日頃の感謝と愛情を込めた杏樹へのプレゼントの相談に乗ってほしいと言われたのだ。
志田「じゃあ、ここにしようかな?」
鈴嶺「はい!
……………フフ…楽しみですね!
素敵な旅行にしてくださいね!」
志田「………」
鈴嶺「ん?志田さん?」
志田「君はほんと、綺麗だね」
鈴嶺「え?
フフ…ありがとうございます!
でもダメですよ?
そんなこと言われたら、ドキッてきちゃいます(笑)」
志田「………」
鈴嶺「……/////
ん?志田さん?」
志田「君といると、俺は自分が穢れてるって思い知らされるよ」
鈴嶺「え?穢れてる?」
志田「そうだよ」
鈴嶺「志田さんは、穢れてません!
綺麗です!」
真っ直ぐ見上げ、言い切る鈴嶺。
志田「でも、わかってる?
俺は、赤王組の若頭だよ?
君の想像つかないことばかりしてるよ?
人を騙したり、傷つけることで金を稼いでいる」
鈴嶺「でも杏ちゃんを想う気持ちは、本物で何の穢れもないですよね?」
志田「そうだよ。
離婚できないだけで、俺が愛してるのは杏だよ」
鈴嶺「杏ちゃんといる時の志田さんは、とても綺麗です!
杏ちゃんを見る目も、雰囲気も、口調も柔らかくて甘くて……
今も、とっても優しくて柔らかいですし。
もちろん、志田さんのお仕事は綺麗じゃないです。
だから志田さんなら、いつか“杏ちゃんのために”その恐ろしい所から出てきてくれるって信じてます!」
志田「………」
甘い。
甘すぎる。
━━━━━━━考え方が。
それが出来たら、こんなに苦しい思いをしない。
志田「━━━━━やっぱり君は、綺麗だ。
真っ白で、何の穢れもない天使」
鈴嶺「フフ…」
褒められたと思い、素直に喜ぶ。
志田「鈴嶺ちゃん」
鈴嶺「はい」
志田「気を付けなね」
鈴嶺「え?」
志田「君を襲った俺の組員、江原のような奴は世の中にはごまんといる。
ただ君が、凱吾くんや佐木さんに守られてるってだけ。
それを、忘れちゃダメだ………!」
鈴嶺「…………はい」
志田の言葉に、大きく頷く鈴嶺。
少し、表情が強張っていた。
それは志田の表情が、あまりにも恐ろしく…でも切なく歪んでいたからだ。
肌寒くなってきた頃。
鈴嶺「凱くん、行ってらっしゃい」
凱吾「うん」
鈴嶺「早く…帰ってきてね…」
いつものように、凱吾のジャケットを小さく握り見上げる。
凱吾「うん。何かあったら、いつでも連絡しておいで?」
実は凱吾は、この時間が嫌いじゃない。
鈴嶺が、自分を求めてくれてることが目に見えるから。
鈴嶺の“自分への依存”が、凱吾に安心を与えるのだ。
凱吾「あ!そうだ!
今日、気を付けなよ?」
鈴嶺「え?あ、うん。
でも大丈夫だよ?
志田さんがいるし」
凱吾「鈴嶺」
鈴嶺「え?」
凱吾「“あの事”忘れたの?」
鈴嶺「え……」
鈴嶺の脳裏に蘇る、恐怖。
デパートのエレベーター内。
煙草と酒の匂いをさせた、江原。
吐き気がする程の口唇の感触。
鈴嶺の、凱吾のジャケットを握る力が強くなる。
凱吾「あのクズは、志田さんの部下だよ?」
鈴嶺「わかっ…て…るよ?」
凱吾「僕は、一生、許さないから━━━━━」
そして、鈴嶺は志田と街にいた。
鈴嶺「ここなんか、どうですか?」
志田「おっ!!いいね~!」
鈴嶺「杏ちゃん、きっと喜びますよ?」
二人は旅行代理店にいて、パンフレットを見比べていた。
志田に、日頃の感謝と愛情を込めた杏樹へのプレゼントの相談に乗ってほしいと言われたのだ。
志田「じゃあ、ここにしようかな?」
鈴嶺「はい!
……………フフ…楽しみですね!
素敵な旅行にしてくださいね!」
志田「………」
鈴嶺「ん?志田さん?」
志田「君はほんと、綺麗だね」
鈴嶺「え?
フフ…ありがとうございます!
でもダメですよ?
そんなこと言われたら、ドキッてきちゃいます(笑)」
志田「………」
鈴嶺「……/////
ん?志田さん?」
志田「君といると、俺は自分が穢れてるって思い知らされるよ」
鈴嶺「え?穢れてる?」
志田「そうだよ」
鈴嶺「志田さんは、穢れてません!
綺麗です!」
真っ直ぐ見上げ、言い切る鈴嶺。
志田「でも、わかってる?
俺は、赤王組の若頭だよ?
君の想像つかないことばかりしてるよ?
人を騙したり、傷つけることで金を稼いでいる」
鈴嶺「でも杏ちゃんを想う気持ちは、本物で何の穢れもないですよね?」
志田「そうだよ。
離婚できないだけで、俺が愛してるのは杏だよ」
鈴嶺「杏ちゃんといる時の志田さんは、とても綺麗です!
杏ちゃんを見る目も、雰囲気も、口調も柔らかくて甘くて……
今も、とっても優しくて柔らかいですし。
もちろん、志田さんのお仕事は綺麗じゃないです。
だから志田さんなら、いつか“杏ちゃんのために”その恐ろしい所から出てきてくれるって信じてます!」
志田「………」
甘い。
甘すぎる。
━━━━━━━考え方が。
それが出来たら、こんなに苦しい思いをしない。
志田「━━━━━やっぱり君は、綺麗だ。
真っ白で、何の穢れもない天使」
鈴嶺「フフ…」
褒められたと思い、素直に喜ぶ。
志田「鈴嶺ちゃん」
鈴嶺「はい」
志田「気を付けなね」
鈴嶺「え?」
志田「君を襲った俺の組員、江原のような奴は世の中にはごまんといる。
ただ君が、凱吾くんや佐木さんに守られてるってだけ。
それを、忘れちゃダメだ………!」
鈴嶺「…………はい」
志田の言葉に、大きく頷く鈴嶺。
少し、表情が強張っていた。
それは志田の表情が、あまりにも恐ろしく…でも切なく歪んでいたからだ。