丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
それから、志田と近くのカフェにいた。

鈴嶺「でもいいなぁー、旅行!」

志田「凱吾くんに頼んだら?
喜んで連れてってくれると思うよ?」

鈴嶺「あー、凱くんもですけど……
これ!見てください!」

志田「ん?」
鈴嶺が見せてきたのは、先程いた旅行代理店にあったパンフレット。

そこには【大人の秋休み!自然の中で、癒されよう!たまには、大人だけで子どものようにはしゃごう!】と書かれてきた。

グランピングのパンフレットで、魚釣りやBBQ、自然での遊びなどが出きるのだ。

鈴嶺「面白そうでしょ?
しかもここ、星空がとっても綺麗なんですって!」

志田「だったら、幼馴染みのみんなで行ってくればいいよ!
君が声をかけたら、みんな喜んで来てくれるよ?」

鈴嶺「え?志田さんは?」

志田「え?」

鈴嶺「志田さんは、来てくれないんですか?」

志田「俺は行かない方がいいと思うよ?
凱吾くんだって、嫌がるに決まってる」

鈴嶺「凱くんは、私が説得します!」

志田「でもね……」

鈴嶺「嫌ですか?私達との旅行」

志田「そんなことないよ?
でも、鈴嶺ちゃんは俺を信用しすぎじゃないかな?」

鈴嶺「志田さんは、絶対に私を裏切りません」

志田「え?」

鈴嶺「凱くんは信用できないって言ってたけど……
私が杏ちゃんの親友でいる限り、志田さんは絶対私を裏切ったりしない」

志田「鈴嶺ちゃん、君……」

鈴嶺「志田さんは、杏ちゃんを傷つけることはしないから。
いや、できないと思います。
凱くんと志田さんは、似てます。
恐ろしくて、怖いものがない。
でも本当に愛する人には一途で、甘くて優しい」

志田「………」

鈴嶺「そして、愛する人のためなら何でも出きるところ。
どんなに納得いかなくても、全て受け入れることが出きる。良い意味でも悪い意味でも。
だからわかるんです。
志田さんは“杏ちゃんのために”私を裏切らない」

志田「………」

この子、ただモンじゃない。

正直志田は、鈴嶺を甘く見ていた。
ピュアで、汚いものを見たことのない。
いつも佐木や凱吾から守られてる、世間知らずのお嬢様。

何も知らない、わからない、赤子のような女。


見据える鈴嶺に、志田は何も言えなくなっていた。
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