仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
「はじめまして、桜澤です。八田さんとおよびしても?」
「名前で呼んでください。お腹は空いていませんか? ラウンジですがフードも美味しいですよ。料理研究家の方に自信満々勧めるのは緊張しますが」
まあ、よく回る口。思わずそんなふうに思ってしまう。やはりものすごく女性慣れしている。夜景を正面に、並んでソファに腰掛けながら、とんでもない場に来てしまったかもと不安になった。
「桜澤さん、今日はご足労いただき本当にありがとうございます」
目の前にジンバックとミモザが並んだところで、八田さんが口を開いた。
「驚きましたよね。いきなり会いたいと言って、さらに結婚の話なんて」
「ええ、正直に言いまして、戸惑っています」
私は気圧されまいと先手を取ることにした。
「確かに私は結婚について前向きに考え始めていました。……仕事のためという理由が大きいのですが。八田さんがどうして私に声をかけてきたのかがわからないんです」
メディア露出があるせいか、お互いのスペックは事前に確認できる。知人の知人くらいの距離がちょうどいいのもわかる。
でも、それ即ち結婚相手になるだろうか。
「本気で私を結婚相手にと考えているんですか?」
「桜澤さん、俺とあなた、並んだらよく似合うと思いませんか?」
突然の言葉に私ははたと止まり、言葉を失った。彼は悪気なんか一ミリもなさそうに続ける。
「人気絶頂の美人料理研究家、テレビでも顔を見る弁護士。……誰もが羨むカップルになれると思いませんか?」
「名前で呼んでください。お腹は空いていませんか? ラウンジですがフードも美味しいですよ。料理研究家の方に自信満々勧めるのは緊張しますが」
まあ、よく回る口。思わずそんなふうに思ってしまう。やはりものすごく女性慣れしている。夜景を正面に、並んでソファに腰掛けながら、とんでもない場に来てしまったかもと不安になった。
「桜澤さん、今日はご足労いただき本当にありがとうございます」
目の前にジンバックとミモザが並んだところで、八田さんが口を開いた。
「驚きましたよね。いきなり会いたいと言って、さらに結婚の話なんて」
「ええ、正直に言いまして、戸惑っています」
私は気圧されまいと先手を取ることにした。
「確かに私は結婚について前向きに考え始めていました。……仕事のためという理由が大きいのですが。八田さんがどうして私に声をかけてきたのかがわからないんです」
メディア露出があるせいか、お互いのスペックは事前に確認できる。知人の知人くらいの距離がちょうどいいのもわかる。
でも、それ即ち結婚相手になるだろうか。
「本気で私を結婚相手にと考えているんですか?」
「桜澤さん、俺とあなた、並んだらよく似合うと思いませんか?」
突然の言葉に私ははたと止まり、言葉を失った。彼は悪気なんか一ミリもなさそうに続ける。
「人気絶頂の美人料理研究家、テレビでも顔を見る弁護士。……誰もが羨むカップルになれると思いませんか?」