仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
「うちの旦那、年上でバツイチでしょ。前の奥さんとの間に子どもができなかったのが離婚理由で、彼、責任感じてるんだよね。私は子どもはいらないよって彼に言って結婚したのに、今更若菜が可哀想だって言いだしてさぁ」
「じゃあ、旦那さんの希望で不妊治療を?」
「そう。つまりは何が言いたいかって、最初は利害一致で結婚しても、一緒に暮らすうちに気持ちは変わるってこと。情が湧くことも、嫌悪が湧くこともあり得る。メリットだと思っていた部分が変わる可能性もある」

若菜は頭を掻いて、眉根を寄せて言う。

「八田さんを紹介した手前、脅すようなことを言いたくはないけれど、こういう事情で結婚したんだし、契約婚のメリットがなくなったとき、もめないように考えておいたほうがいいよ」
「それは……うん、気を付ける。居心地のいいルームメイトでいるし、メリットについては今後も話し合っていくつもり」

考えてみれば、同性同士のルームシェアだって価値観が合わなければ苦痛だ。
それを私たちは結婚という制度で縛っている。簡単に解消できない分、ストレスが溜まってはこじれるだろう。
気を遣わないと決めたけれど、お互いいい関係でいられる努力は、これからも継続していくべきなのかもしれない。

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