仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
ともかくおしゃれなイメージ戦略デートは一日かけて終わった。
いつ撮られてもいいようにと気を張っていたせいか、私も彼もすごく疲れて帰宅した。

「シャワー浴びてくる」
「夕食、お茶漬けでよければ準備するよ」
「あー、助かるー」

くたくたの私たちはそれぞれシャワーを済ませ、お茶漬けをもそもそ食べると部屋に引きとった。
はたして、イメージ戦略のデートになったかしら。
緊張感が抜けなくて疲れたなあ。私はそのまま眠ってしまい、深夜まで起きなかった。



それから一週間後に事件は起こった。
午後、仕事の打ち合わせを終え、若菜に送ってもらって帰路についた私はスマホに着信が入っているのに気づいた。

「そういえば、スマホ振動してたわよ。夕子の」
「史彰からだ。メッセージも入ってる」

開いてみると『ごめん』というメッセージ。なんだろう。とても不安になって返信する。
『なに?』と返すと画像が送られてきた。ファックスを写真に撮ったもので、『明日発売の週刊誌に載る。嘘だから、信じないで』というメッセージがついている。

どういうことだろう。荒い印刷の写真付きの記事だ。目を凝らしてチェックすると、そこにはスーツ姿の史彰の姿。隣に寄りそう女性は見たことがある。

「局アナだ。ハイローのサブ司会の……」
「へえ? どうしたの、夕子」

スマホを凝視しながらひとりごとを言う私に、若菜が自体を呑み込めない相槌を打つ。記事の煽りには『噂のイケメン弁護士とヨアケテレビの後藤アナ、新婚早々不倫愛!?』なんて文言が並んでいる。

「な~んで私とじゃなく、アナウンサーと週刊誌に載ってんのよ~」

思わず苛立った声をあげてしまい、運転中の若菜も合点がいったようだ。

「もしかして八田さん、スキャンダル? とりあえず落ち着いて」

これではイメージアップとは真逆ではないか。私はふつふつと湧いてくる怒りに拳を握った。

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