仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
「相手は非公表の住所を調べて手紙を送ってきている。この内容も脅迫ともとれる。警察に相談するべき事案だけど、俺の目線から言わせてもらうと脅迫の証拠としてはまだ薄い。一通手紙を送って満足する相手なら捨て置こう。続くようなら証拠をすべてそろえて警察に相談しよう」
「相談ってストーカー被害ってこと?」
「ネットで個人情報を売り買いしている人間もいる。でもこういった手紙が続けば脅迫にあたるし、つきまといや監視行為があればストーカー規制法の対象にもなる」
おそらくこのような事案にも慣れているのだろう。史彰は非常に落ち着いた様子で説明した後、ふうと息をついた。
「夕子」
大きな手が頭に置かれ、ゆっくりとさすってくる。
「いろいろ怖かったね。大丈夫、俺がついてる」
顔面蒼白で震える人間に、思いやり深い対応だわなんて思っていたら、不意に抱き寄せられた。
「史彰……」
驚いたけれど抗う気はなかった。むしろ、史彰の体温に縮こまっていた心と身体がゆるんでいくのを感じる。
胸にそっと頬を寄せると、力強い腕がなおもしっかりと私を抱きしめた。
「さ、さすが、敏腕弁護士ね。こういうときの被害者の扱いに慣れてるじゃない」
「いくらなんでも相談者にハグはしないだろ。俺は夕子の旦那さんとして、ハグしてるんだよ」
そう言って史彰は何度も何度も私の背を撫でさすってくれた。
「ありがとう」
涙がにじんできた。
本当はすごくショックだった。知らない誰かの強い感情が怖かった。
そして、一瞬でもそんな相手をがっかりさせたと思ってしまった。
「相談ってストーカー被害ってこと?」
「ネットで個人情報を売り買いしている人間もいる。でもこういった手紙が続けば脅迫にあたるし、つきまといや監視行為があればストーカー規制法の対象にもなる」
おそらくこのような事案にも慣れているのだろう。史彰は非常に落ち着いた様子で説明した後、ふうと息をついた。
「夕子」
大きな手が頭に置かれ、ゆっくりとさすってくる。
「いろいろ怖かったね。大丈夫、俺がついてる」
顔面蒼白で震える人間に、思いやり深い対応だわなんて思っていたら、不意に抱き寄せられた。
「史彰……」
驚いたけれど抗う気はなかった。むしろ、史彰の体温に縮こまっていた心と身体がゆるんでいくのを感じる。
胸にそっと頬を寄せると、力強い腕がなおもしっかりと私を抱きしめた。
「さ、さすが、敏腕弁護士ね。こういうときの被害者の扱いに慣れてるじゃない」
「いくらなんでも相談者にハグはしないだろ。俺は夕子の旦那さんとして、ハグしてるんだよ」
そう言って史彰は何度も何度も私の背を撫でさすってくれた。
「ありがとう」
涙がにじんできた。
本当はすごくショックだった。知らない誰かの強い感情が怖かった。
そして、一瞬でもそんな相手をがっかりさせたと思ってしまった。