仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
4. 意識してしまう
手紙の事件からひと月ほどが経った。私と史の結婚生活も三ヶ月になり、順調そのものだ。
あれ以来、妙な手紙は届いていない。買い物や取材などは若菜が必ず送り迎えしてくれ、休日は史彰が一緒に出掛けてくれる。ポストを開けるのも彼が担当し、不審な封書などはチェックしてもらっている。
強いて言うなら、投稿動画やSNSの更新のたびいくつかのアカウントからリプライが届く。
『信じています』
同じメッセージだ。私が家庭的な料理をあげると『裏切り者』と入る。おそらくひとりの人物がアカウントをわけているのだろうが、手紙の送り主と同一人物かはわからない。IPアドレスの開示請求をすることもできるそうだけれど、手間がかかるし請求が必ずしも通るかはわからないそうだ。
史彰のアドバイスで、昔稼働させていたブログを再稼働させた。
粘着している視聴者なら、こちらも確認に来るだろうという読みは当たった。やはり同じように『信じています』『裏切り者』とコメントがつく。ブログに解析機能を搭載しているので、この人物のIPアドレスがわかった。
「これらは全部証拠になるから、保存しておこう」
史彰の指示どおり、私はこれらのリプライやコメントをすべてスクリーンショットに収めた。
しかし、気味の悪いメッセージに触れ続けるのは気分のいいものではなかった。