仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
『いえ、無理です。妻帯者が女性とふたりで食事というのは誤解を招きますので』
『お仕事の打ち合わせですよぉ。変な意味じゃなくてぇ』
『打ち合わせは佐田プロデューサーとしていますので、後藤さんと個別にするお話はないですよ』
『MCとの絡みって重要じゃないですか。八田先生のイメージ的にも』
会話の内容は後藤アナが一生懸命史彰を誘っている様子だった。史彰はそれを丁寧に断り続けている。
『私個人が、八田先生に相談事があっても駄目ですか?』
『申し訳ありませんが、それこそうちの事務所を通してください。私もいくつか案件を抱えていますので、必ずしも私が承れるとは限りませんが』
『先生がいいのに~。ねえ、お願いします。今度お時間を作ってもらえませんか?』
『休日は妻と過ごしますので』
まだまだ続くようなこのやりとり。史彰は音声アプリを切った。
「週刊誌の件があったから、今日寄ってきた時点で起動させておいたんだ。念のため、証拠としてきみのスマホにもこの音声送っておく」
「ねえ、いつもこんなにしつこくされてるの?」
「今日は格別しつこかったかなあ。周りが心配するくらいで、一緒に出演してる喜多澤弁護士が助け船をだしてくれて、飲み会の後は後藤アナに見つからないように同じタクシーで帰ってくれた」
喜多澤弁護士って、ハイ&ローでは史彰のことを「若造」と呼んだり、チャラいと弄っている壮年のベテラン弁護士だ。
実際はそういう優しい方なのね。
『お仕事の打ち合わせですよぉ。変な意味じゃなくてぇ』
『打ち合わせは佐田プロデューサーとしていますので、後藤さんと個別にするお話はないですよ』
『MCとの絡みって重要じゃないですか。八田先生のイメージ的にも』
会話の内容は後藤アナが一生懸命史彰を誘っている様子だった。史彰はそれを丁寧に断り続けている。
『私個人が、八田先生に相談事があっても駄目ですか?』
『申し訳ありませんが、それこそうちの事務所を通してください。私もいくつか案件を抱えていますので、必ずしも私が承れるとは限りませんが』
『先生がいいのに~。ねえ、お願いします。今度お時間を作ってもらえませんか?』
『休日は妻と過ごしますので』
まだまだ続くようなこのやりとり。史彰は音声アプリを切った。
「週刊誌の件があったから、今日寄ってきた時点で起動させておいたんだ。念のため、証拠としてきみのスマホにもこの音声送っておく」
「ねえ、いつもこんなにしつこくされてるの?」
「今日は格別しつこかったかなあ。周りが心配するくらいで、一緒に出演してる喜多澤弁護士が助け船をだしてくれて、飲み会の後は後藤アナに見つからないように同じタクシーで帰ってくれた」
喜多澤弁護士って、ハイ&ローでは史彰のことを「若造」と呼んだり、チャラいと弄っている壮年のベテラン弁護士だ。
実際はそういう優しい方なのね。